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未来を切り拓く「未知への挑戦」ビジネス

iPS細胞研究の大きなメリットは、病気メカニズムの解明と創薬にあります【前編】(1/5ページ)

2013.02.21

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 イノベーションをいかに起こしていくかが日本企業再生への大きな課題となっている。新たなフロンティアを開拓するには異分野の知識や発想を取り入れることが重要だ。いま最も期待されるiPS細胞研究は日本が世界をリードし、新たな時代を切り拓こうとしている。
 そこで、イノベーションを起こすヒントを探るため、脳や脊髄の神経再生という研究分野で世界的に注目される慶應義塾大学医学部の岡野栄之教授を訪ねてみた。

インタビュー/長坂邦宏 nikkei BPnet編集
文・構成/宮島 理
写真/中野和志

「時計の針を巻き戻す」働きをするiPS細胞とは?

――昨年はiPS細胞という言葉が一躍知られるようになりましたが、あらためてどのようなものか簡単にご説明いただけますか。一般向けの解説では、「時計の針を巻き戻す細胞」と言われることが多いようですが。

「脊髄損傷の治療は5年後の臨床応用を目指しています」と語る岡野栄之・慶應義塾大学医学部教授
撮影/中野和志

岡野栄之教授(以下、岡野) 2012年のノーベル生理学・医学賞は山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所所長・教授が受賞されましたが、「成熟した細胞に対してリプログラミング(初期化)により多能性を持たせられることの発見」というのがその受賞理由でした。いわゆる核移植によるクローン技術(英国のジョン・ガードン氏)とiPS細胞技術(山中教授)が受賞対象となりました。

 成熟した細胞というのは、たとえば皮膚の細胞であれば皮膚でしかありえないという性質を持っています。しかし、遺伝子の情報としては、受精卵と基本的にはまったく変わらない。受精卵はあらゆる細胞になれますが、ひとたび成熟した細胞になると、他の細胞にはなれないのです。

 そこで、成熟した細胞を「初期化」することにより、他の細胞になることができるようにする技術がiPS細胞技術というわけです。細胞というのは時間が経てば経つほど特殊化して、特定の細胞になっていくのが普通ですが、iPS細胞技術では、その時間を巻き戻すように初期状態をもたらすことができます。

岡野栄之(おかの・ひでゆき)氏
慶應義塾大学大学院医科学研究所、同大学医学部生理学教室教授
 1959年1月26日生まれ。83年3月、慶應義塾大学医学部卒業。同4月、同生理学教室助手。85年8月、大阪大学蛋白質研究所助手。89年10月、米ジョンス・ホプキンス大学医学部生物化学教室研究員。その後、東京大学医科学研究所助手、大阪大学医学部教授などを経て、2001年4月に慶應義塾大学医学部生理学教室教授。07年10月、同大学大学院医学研究科委員長。10年3月、内閣府・最先端研究開発支援プログラム「心を生み出す神経基盤の遺伝学的解析の戦略的展開」の中心研究者。
 04年イタリアCatania大学よりDistinguished Scientists Award受賞、06年文部科学大臣表彰・科学技術賞受賞、07年Stem Cells誌よりLead Reviewer Award受賞、09年紫綬褒章授章など多数。

岡野研Weblog
慶應義塾大学 幹細胞医学のための研究拠点

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