A. 「HEMS」は、「ヘムス」と発音する。「home energy management system」の頭文字を取ったもので、日本語でも「ホーム・エネルギー・マネジメント(管理)・システム」と呼んでいる。一言で説明すると、センサーやITの技術を活用して、住宅のエネルギー管理、「省エネ」を行うシステムを指す。
なお、「BEMS」(Building Energy Management Systems:ビル・エネルギー管理システム)という言葉もあり、こちらは業務用ビルのエネルギーを管理するシステムだ。
「HEMS」で実現できることは、大きく分けて2つある。「表示」と「制御」だ。どれだけのエネルギーが、いつ、どこで、何に使用されているかを「見える化」するのが「表示」である。そして、家中の機器を一括してコントロールしたり、自動的にエネルギー使用量を最適化したりするのが「制御」だ。
最近の家電製品を見るとあることに気がつく。センサーやコンピュータの技術を応用して、“賢い"省エネ機能を搭載した機器が増えてきていることだ。これらのデジタル化やネットワーク化された家電は、一般的に「情報家電」と呼ばれている。
例えば、電力消費のデータを収集して、電力の利用状況のリポートや省エネのためのアドバイスをしてくれる家電製品がそうである。人の在・不在を感知して電源のオン・オフを自動的に行ったり、生活パターンを学習して自動的に消費電力の最適化を行ったりする家電製品もそうである。
情報家電にHEMSを当てはめていうと、前者が「表示」で、後者が「制御」である。家電製品もずいぶんと進歩して未来的になってきた。
「HEMS」は、そこからさらに一歩進んで、家中のこれら家電製品や他のエネルギーを使用する製品を、住宅全体として管理して「表示」し「制御」しようという取り組みだ。
HEMSを導入した住宅では、例えば、夏場の消費電力が極端に多いといった場合、それが、毎日子どもが帰宅したあとの昼間、午後3〜5時に冷蔵庫が何度も開閉されている、一度にテレビとパソコン、ゲーム機、オーディオの電源が入れられている、といった具体的な省エネ対策のポイントが見えるようになる。
また、あらかじめ最大使用電力を設定しておけば、家の総使用電力が設定量に達したときに、遠隔操作または自動でエアコンの温度設定を変えたり、優先順位の低い機器の電源を切ったりすることができる。
家庭での省エネは早急に対応しなければならい課題のひとつだ。資源エネルギー庁によると、部門別最終エネルギー消費では、1973年度の消費量を100%とした場合、1998年の段階で、民生・家庭部門の消費量は217%にまで達している。部門別の増加率では運輸・旅客部門の274%についで2番目である。それに対し、従来から省エネ法などでエネルギー消費の削減を課せられてきた産業部門では、106%にすぎない(【Q.47】この4月から「改正省エネ法」が強化される?)。
京都議定書で日本に課された6%のCO2排出削減(90年比の2008〜2012年の平均排出量)(【Q.25】「京都議定書」で何が決められたんだっけ?)を実現するためには、民生・家庭部門での省エネが必須なのは明らかだ。
そのために、政府もHEMSの普及促進を図っている。2002年発表の「地球温暖化対策推進大綱」や、2008年に改定された「京都議定書目標達成計画」のなかでも、HEMSの開発・普及の必要性が述べられている。
課題はコストだ。現状ではシステム導入には大きなコストが必要となる。省エネのためだけに、わざわざ大金を払って高価な管理システムを導入しようという人はそう多くはないかもしれない。 しかし、情報家電の例にも見られるように、行政だけでなく、民間企業も独自に研究・開発を行ったり、エネルギー関連企業や家電メーカーで連携したりしながら、徐々にHEMS実現に向けて動き出している。
例えば、太陽光発電(【Q.50】なぜ太陽光で発電できるの?)やコージェネレーション(【Q.34】「コージェネレーション」って何?)をはじめ、給湯設備を連動させたエネルギー管理システムや、HEMSとプラグイン・ハイブリッドカー(【Q.4】「プラグイン・ハイブリッドカー」と「ハイブリッドカー」の違いは?)や電気自動車などを連携させ、「表示・制御」に「蓄電」の機能を付加することなどで、より効率的なエネルギー管理を実現しようという試みもある。
こうしたシステムがパッケージとして提供されるのであれば、リフォームや新築する際に、HEMSをずっと導入しやすくなるだろう。
米国では、オバマ政権の推進する「グリーン・ニューディール政策」によって、センサーとIT技術を利用した次世代電力網の構築が始まろうとしている。「表示」と電気使用量の支払いなどを可能にする「スマートメーター」や、電力供給量を自動調節したりできる「スマートグリッド」(【Q.45】「スマートグリッド」って何?)の導入だ。日本国内でも将来同様の取り組みが導入されるようになるだろう。
HEMSをはじめとしたエネルギー管理システムの進歩は着実に進んでいる。大きなビジネスの可能性や、地球環境保護のために、これらの技術の動向に注目しておくべきだろう。
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