自己啓発的なライフハックではいかに効率的に自己主張をするかがテーマになることが多い。だが普通の人間は、特に組織の中や他の人と一緒にいる場合は、目立たないほうが得策だ。目立つと「あの人はスゴい」と思われるより、「あの人はウザい」と思われる。目立たないように意図的に存在感を薄くしたいときは、身だしなみや服装なども人が理解しやすいものにするのは当然として、視線も柔らかくするとよい。
視線を柔らかくするというのは、目で語らないようにすることだ。わかりやすい例としては、女性と向き合った男性の視線がどこに向かっているのか? 女性はちゃんと男性の視線を読んでいる。視線の使い方には注意したいものだ。
視線を柔らかくするポイントは、人を風景のように見ることだ。それぞれの人に視線を当てず、全体に意識を分散して見るようにする。気になる人がいるなら、目をきょろきょろさせず、視点の中央から少しそらした地点で何気なく、まったりと見るようにする。人間の視覚は中心以外もちゃんと見えるので、中心を外したところで物事を捉えるようにすると、他人からはぼんやりした状態にいると理解される。視覚を分散して広げて見る技術は、速読術やパソコンの操作の時にも応用できる。

人を見るとき意図的に視線の焦点を遠くにおいて全体を風景でも見るように見ると視線が柔らかくなり、うるさい印象を他人に与えなくなる。
人を風景として見るときのもうひとつのコツは焦点を人の位置より奥のほうに置くことだ。簡単な例で説明しよう。それほど混雑していない電車に乗って座ったとき、向かい側の席の人に焦点を当てるのではなく、少し上を見るような感じで、外の風景のできだけ遠いところに焦点を当てるようにする。すると、向かい側の人からは「あの人ぼんやりしているな」というふうに見える。亡くなったSF作家半村良はバーテンダーの経歴があるが、その時代お客さんを見るときは、その人の頭の後ろに焦点を当てるようにしたという。そういう感じで人を見ると、視線は柔らい印象になる。
視線を柔らかくする技術はプレゼンテーションにも応用できる。プレゼンテーションというとプレゼンテーターの存在を強くアピールするとよいかのようだが、実際には濃い印象のプレゼンテーターは重苦しい。ある一定の距離感を持った軽い感じのほうが理解されやすい。
そこでプレゼンテーションの視線の使い方だが、単純に聴衆を風景のように見るのでは、語りかける感じがしてこない。そこで、視野を左右と中央に3つに分け、それぞれやや遠方でかつ比較的にプレゼンテーションの話に関心を持っていそうな人を3人ほど探す。プレゼンテーションを行うときは、その3人を定点にして視野を柔らかく広げ、ゆっくりと巡回しつつ話をするとよい。
テクニカルライター。1957年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、同大学院で言語学を学ぶ。1990年前半友人と翻訳・テクニカルライティング事務所を経営。1994年末、インターネットによる遠隔地業務可能に合わせフリーランスとなり沖縄に移住。2002年東京に戻り現在に至る。「日経クリック」(現在休刊中)で10年間Q&Aを担当。日経トレンディネットネットで起きてる最新トレンド、およびGoogle調査隊のコラムを執筆中。著書、『ブラウザのしくみ』(技術評論社)、『Ajax実用テクニック』(ナツメ社)など。





