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細野透 「危ない建築」と「安全な建築」の境目を分けるもの 建設

細野透:何冊で床抜け?――「本崩れ」にまつわる意外な難問【前編】(1/6ページ)

2013.12.10

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床抜け、棚抜け、本棚の転倒

 本は重いため、大量に収集すると床がたわみ、最悪の場合には抜け落ちてしまう。さらに、本棚に本を詰め込みすぎると、棚が抜けて本が落ちてくる。加えて、本棚をしっかり固定していないと、地震のときに転倒して、本が飛び出してしまう。これらを総称して「本崩れ」と呼ぶ。

 本崩れに関して、メディアやネットでしばしば紹介されてきたが、現在でもほとんどの人が誤解している事柄がある。それは、本が何冊で床抜けするかという「重さ」の問題である。

 住宅の床は通常、1平方メートル当たり180kgの重量(=積載荷重)に耐えるように設計されている。日本人の平均体重は成人男子で60kg台、女子で50kg台なので、男子なら3人で床が抜けてアウトになり、女子なら3人でもなんとかセーフという計算になる。

 後で詳しく説明するが、1129冊の文庫本を1平方メートルの床一面に25cmの高さまで積み上げると、重さが180kgに達して計算上はアウトになる。

 しかし、文庫本を床一面に積み上げるのではなく、本棚に収納したとしよう。すると、意外なことに、本棚と本を合計した重さが180kgに達したときではなく、その半分のわずか90kgでアウトになってしまう。本棚の自重を30kgとすると、本の重さは60kgなので、文庫本の冊数ではわずか377冊にすぎない。なぜこうなるのか、理由がお分かりだろうか。

 本を床一面に積み重ねた状態を、構造力学の専門用語で「等分布荷重」、本棚に収納した状態を「集中荷重」と呼ぶ。構造力学についての理解が不足しているため、限界値が90kgであることに気がつかないで、積載荷重の180kgまで大丈夫と誤解して本棚に詰め込みすぎて、「本崩れ」を引き起こしていた面があったのではないか。

 私は本好きが高じてジャーナリストになり、ジャーナリストになってからは多数の本を買い込んで乱読する生活を続けてきた。今回は、書庫付き住宅の設計経験が豊富な建築家の根岸俊雄氏の協力を得て、「本崩れ」問題をまとめてみた。

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