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細野透 「危ない建築」と「安全な建築」の境目を分けるもの 建設

南海トラフ巨大地震を上回る「最悪の地震」とは何か(4/4ページ)

2012.10.03

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科学的な「最悪の地震」とは何か?

 琉球海溝まで断層破壊が及ぶという説を提唱したのは、名古屋大学大学院環境学研究科の古本宗充教授(固体地球物理学)である。

 東日本大震災が発生する4年前、「地震予知連絡会会報第78巻(2007年8月)」に、古本教授は、「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性」と題する論文を発表している。

 以下の図は、同論文から抽出した。想定震源域は九州や沖縄を越え、台湾にまで迫ろうとしている。

 古本教授は、「少なくとも御前崎から喜界島にかけての、距離1000kmを越える領域を大きく変位させるような、M9クラスの西日本超巨大地震が、平均して約1700年の間隔で発生した可能性がある」と推測する。

 同論文を重視しなければならないのは、2007年時点において、「地震予知連絡会会報」という権威のあるメディアで、「日本付近で言えば、ここで取り上げる西南日本から琉球にかけての地域はもちろん、東北日本弧や千島弧、場合によっては伊豆─小笠原弧ですら対象とすべき」としていた事実である。すなわち、東日本大震災の発生可能性を指摘していた、とも受け取れる。

 このように、纐纈教授と古本教授によれば、中央防災会議の南海トラフ巨大地震でさえ、「科学的な最悪の地震」ではない。「最悪の地震」が発生した場合には、断層破壊は宮崎県東南沖の九州・パラオ海嶺を突き抜けて、奄美大島東側の喜界島に及び、さらには台湾近くにまで達するかもしれないのである。

 地震動と津波は、どこまで増大するのか。まだ、その上限は見えない。

【参考資料】

1. 中央防災会議「南海トラフ巨大地震の被害想定について─第1次報告(平成24年8月29日)」

2.中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について─中間報告(平成24年7月19日)」

3.中央防災会議「南海トラフの巨大地震モデル検討会─中間とりまとめ(平成23年12月27日)」

4.日本建築学会構造委員会振動運営委員会地震荷重小委員会編「シンポジウム─増大する地震動レベルと今後の耐震設計(3.11を踏まえた意識調査を基に)─2012年7月31日」─「地震動評価の今後の方向性に関する私の意見(東京大学地震研究所教授、纐纈一起)」

5.「地震予知連絡会会報第78巻(2007年8月)」─「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性(名古屋大学大学院環境学研究科、古本宗充)」

細野 透(ほその・とおる)
細野 透(ほその・とおる)

 建築&住宅ジャーナリスト。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年からフリージャーナリストとして活動。東京大学大学院博士課程(建築学専攻)修了、工学博士、一級建築士。細野透編集事務所代表。大学と大学院で建築の構造を学んだ。師である構造家の坪井善勝・東大名誉教授(故人)は、建築家の丹下健三氏(故人)と組んで、代々木オリンピックスタジアム、東京カテドラル聖マリア大聖堂を設計した。ジャーナリストになってからは、方向音痴にめげずに、1000作品以上の建築&住宅を現地取材。インタビューした建築&住宅専門家は3500人を超える。

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