聖マリアンナ医科大学 救急医学教室 助手 児玉 貴光 氏
毎年、冬場になると増加するのが一酸化炭素中毒による死亡事故といったニュースだ。一酸化炭素は、炭素含有物の不完全燃焼によって生じる無色・無味・無臭の気体であり、発生に気づきにくいという特徴を持つ。日常生活の中で起こりうる一酸化炭素による事故を防ぐには、どのようなことに注意すればよいのか。今回は聖マリアンナ医科大学救急医学教室助手の児玉貴光氏に、一酸化炭素中毒の症状と治療に関する話を聞いた。
聞き手・文/藤崎典子、写真/藤井誠
気づかないうちに一酸化炭素は充満する
一酸化炭素が発生しやすいのはどのような状況ですか。

児玉:
一番身近なところでは、閉鎖空間の中でストーブなどの暖房器具を用いる場合でしょう。昔の日本家屋ではすき間がありましたが、今のマンションなどは気密性が高いため、「まさか」と思うような状況でも事故が起こります。よくいわれることですが、暖房中の「こまめな換気」は本当に重要です。
また、車の排気ガスによる一酸化炭素中毒もあります。自殺に使われることもありますが、意図しなくても車内に充満してしまうケースがあります。久しぶりの大雪で、マフラーが雪に埋もれていることに気付かずにエンジンをかけ続けたため、一酸化炭素が車内に逆流するという事故も起きています。積雪量の多い地方では、エンジンをかけたまま車を停止している際、雪でマフラーが隠れてしまっていないかを常に注意しておく必要があります。
それから、ガス炊きのお風呂が原因となる場合もあります。特に注意したいのは、追い炊き機能があって、横にボイラーが付いているような古いタイプのお風呂です。入浴中は、窓を開けて換気するというわけにもいかないので、日ごろからガスの燃焼状態や、給排気設備に不備がないかなどをチェックしておいた方がよいでしょう。

一酸化炭素中毒の症状を教えて下さい。
児玉:
一酸化炭素は血液中の『ヘモグロビン』と結合しやすいのが特徴で、吸い込んだのが少しの量であっても血液の酸素運搬能力を低下させ、酸素欠乏状態を招きます。
症状は一酸化炭素の濃度と、その場にいた時間(曝露時間)によって異なってきます。最初は、頭がフラフラする、顔が火照る、などといった症状ですが、段々ひどくなると頭痛やめまい、吐き気などが起こり、最終的には意識障害や意識消失へと重症度が増していきます。ある一定の高濃度に達すると、窒息から即、死亡ということも起こり得ます。
顔の火照り感や頭痛といった段階では、ガスにさらされていると気づかないケースが多いのも事実です。例えば、暖房をしている室内やお風呂場では、温度もかなり高くポカポカしている状態であるため、フラフラしたり火照ったりしても、それがガス中毒による症状だと分からないことも多いのです。また、頭痛や吐き気を起こして病院に来たとしても、それらはその他の病気でもあり得る症状なので、一酸化炭素中毒という診断と結び付かないことがあります。

