耐震構造の「教科書」書き換えを迫る不思議な事実
東日本大震災で発生した地震動を分析すると、建物に最悪の被害をもたらす周期1〜2秒の「キラーパルス」は、阪神大震災の2〜5割にとどまった。そのため、「マグニチュード9、震度7」の巨大な地震であった割には、「普通の新耐震建物」で全壊した建物は少なかった。
このうち、「普通の建物」とは、固有周期が0.1〜0.5秒の木造住宅、鉄筋コンクリート造建物、鉄骨造建物である。また、「新耐震建物」とは、1981年に改正された建築基準法施行令に対応した建物である。
ちなみに、固有周期は、2階建ての新耐震・木造住宅で0.2秒前後、2階建ての旧耐震・木造住宅で0.3秒前後、高さ20mの新耐震・鉄筋コンクリート造建物で0.3秒前後、高さ15mの新耐震・鉄骨造建物で0.3秒前後になる(日本地震学会ウェブサイト「強震動地震学基礎講座」)。
わが国の建物のうち、木造の5割以上が固有周期0.2秒前後、中低層・鉄筋コンクリート造の4割以上が固有周期0.3秒前後である。要するに、「普通の建物」とは、多数派を占める建物でもある。そして、キラーパルスは、これら「普通の建物」に対して、いわば「破壊王」のような役割を果たす。
今回の地震エネルギーは、阪神大震災(M7.3)の1000倍以上。それでも、キラーパルスが阪神大震災の2〜5割に過ぎないのだから、ある意味では「不思議」な現象である。
実は、不思議な出来事は、もうひとつ起こっていた。周期1〜2秒のキラーパルスが「普通の建物」に及ぼす影響に関して、耐震構造の「教科書」を書き換えなければならないほどの、にわかには信じ難い、不思議な事実が観測されていたのである。
1981年に制定された、新耐震基準の時代に書かれた「ステップ1教科書」(耐震構造の入門書)は、「単純共振説」をベースにしていた。また、1995年の阪神大震災後に記述された「ステップ2教科書」は、「2段階破壊説」を唱えていた。それに対して、東日本大震災の教訓を踏まえて、これから書かれる「ステップ3教科書」は、「キラーパルスの一人舞台説」を中心に据えることになるはずである。
今回の地震ではいったい、何があったのだろう。ここでは、まず、「単純共振説」と「2段階破壊説」について詳しく説明。次に、破壊王キラーパルスの不思議な「一人舞台」に焦点を当てる。



