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復興ニッポン:米国の戦略的資産としての日本(1/4ページ)

2011.07.29

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 2010年6月。トロントで開催されたG20サミットにおける米国のバラク・オバマ大統領の発言は、大きな驚きをもって受け止められた。それまで米国政府関係者は、日米同盟が米国のアジア戦略の要であることを、何十年にもわたって一貫して主張し続けてきた。ところが、同大統領が米国の東アジア戦略の「要」として指摘した国が、韓国だったからだ。同年9月、ヒラリー・クリントン国務長官が外交問題評議会で行なった発言も、驚きをさらに増幅させた。米国と同盟国との密接な絆について「再確認する」際に、日本よりも先に韓国を紹介したからである。

 日本政府関係者にその発言の真意を尋ねられた国務省スポークスマンのP・J・クロウリー氏は、日本が地域の安定にとって「錨のひとつ」である事実に変わりはないと答えて不安解消に努めた。しかしそのような対応は、日本の地位低下をますます印象づけるばかりだった。

 オバマ政権が日米関係を重視しているのは明らかだ。大統領が就任後初めて招待した国賓は日本の麻生太郎首相であり、ヒラリー・クリントン国務長官の最初の外遊先は日本だった。しかし、これら米国政府関係者の一連の発言は、日米同盟の存在価値が問い直されていることを図らずも露呈していないだろうか。

 米国の戦略家の間では、太平洋地域での米国の影響力は日本との関係によって決まるという見解が、およそ200年間にわたり引き継がれてきた。米国の軍艦エセックス号が、米国船舶として最初に太平洋上で本格的な活動を行なったのは1815年のことである。このとき任務から帰国したデビッド・ポーター艦長は、中国進出の中継基地として日本に注目すべきだと仲間の士官たちに語った。1853年に日本を訪れて開国を迫ったマシュー・ペリー准将は、後にニューヨークで行なった講演において、日本人はあらゆる面で周辺の民族よりも優秀であり、米国は「教師役として日本をキリスト教国化する」よりは、「相手に敬意を払い、友人として理解し合うべき」だと述べた。セオドア・ルーズベルト大統領は「日本が脅威であることを十分理解している」と述べたうえで、日英米の3国による海洋同盟を模索した。アジアの秩序を維持するためにも、そして太平洋を横断してフィリピン、ハワイ、米国西海岸へと続くシーレーンの安全保障を確保するためにも、日本は欠かせない存在だと判断したのである。さらに米国では、第2次世界大戦終戦前から早くも戦後についての話し合いが行なわれていた。日本専門家たちは、アジア地域を安定させ、米国の覇権を確立するためには、日本経済を復興させるべきだと提言している。時代が下って東西冷戦が始まると、日米同盟は共産主義の封じ込めに必要不可欠な要塞となった。中曽根康弘元首相(在任1982年~1987年)の言葉を借りれば、「不沈空母」がソ連の極東艦隊を閉じ込め、西側の最終的な勝利に貢献したのである。

 しかし、日本を中心とするアジア戦略を擁護する声が聞かれる一方で、中国重視の戦略を求める声も負けず劣らず大きい。1970年代初めのリチャード・ニクソン大統領による中国への電撃的訪問は、日本の地位を明らかに低下させるものであり、日本に大きな衝撃を与えた。そして東西冷戦の終結直後から、ジョージ・H・W・ブッシュとビル・クリントンの両大統領は、いずれも対日貿易戦略で攻撃性を強めた。米国にとって最大の脅威となるのは、もはや安全保障上のライバルではなく、経済上のライバルだと考えられるようになったのである。

 ところが1995年、クリントン政権はアジア戦略の軸足を再び日本に戻した。台頭著しい中国と友好的な関係を築きながらも、強力な日米同盟によって中国を抑え込むことがねらいだった。この戦略はクリントン政権の時代にジョセフ・ナイ国防次官補が作成し、ジョージ・W・ブッシュ政権の時代にリチャード・アーミテージ国務副長官が詳細を詰めた。この方向性は、米国の対アジア政策の総合的な指針として今日に至るまで、影響力が持続している。2010年9月にバイデン副大統領も指摘しているように、米国にとって中国への道とは「日本を経由」している。ここでのバイデン氏の真意は、もちろん米国政府関係者はいつでも中国と直接的なかかわりを持つことができるが、躍進を続ける中国とうまくつき合っていくためには、日本との強い絆が欠かせない要素だというところにある。

 
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