昨年末にメキシコ・カンクンで開かれた国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)では、その成果として「カンクン合意」が発表された。具体的には、先進国の数値目標が国連の条約に組み込まれ法的な位置付けを持ったことや、「グリーン気候基金」の設立が決まるなどの成果を挙げる内容となった。前編では、温暖化対策の究極目標と長期削減目標や適応の重要性などについて述べたが、今回は温暖化対策と貿易の両立から説明を始める。

 カンクン合意III「緩和の更なる促進」のEに、「緩和活動の経済的社会的影響」との項目がある。ここでは、緩和対策の促進に際して、特に脆弱な途上国での経済的・社会的悪影響に配慮すべきことが述べられている。

 ここで重要なのは、貿易と温暖化対策の関係である。90項に次のような記述がある。

「条約締約国は協力して開放的な国際経済システムの促進に努めるべきである。そのことが持続可能な経済成長と発展につながる。特に途上国についてこれが当てはまる。この結果、途上国でも気候変動問題への対処が容易になる。一方的なものも含め、温暖化対策は国際貿易に対する恣意(しい)的あるいは正当化できない差別または偽装された貿易制限となってはならない」

 これはまさに、WTO(世界貿易機関)との関係を述べたもので、自由貿易による資源の有効利用(の便益)と、温暖化対策の両立を宣言したものである。

 しかし、この裏にはドロドロとした利害の対立がある。本来、先進国は自由貿易推進派であるが、温暖化交渉では何かというと「共通だが差違ある責任論」を振りかざして義務を負うまいとする途上国に対し、貿易(制限・禁止)措置をちらつかせつつ、途上国に実質的な義務を負わせようとの先進国の思惑がある(さらに、名目は世界全体での温暖化対策であるが、この裏には自国産業の競争力喪失回避がある)。