筆者は、これまで10数回にわたり欧州へ出張し、EU(欧州連合)や日本の温暖化政策について、現地の関係者と意見交換を重ねてきた。そこでは、EU ETS(欧州排出権取引制度)を重要なテーマの一つとして扱い、多くの知見を得ることができた。本稿では、今年7月に経済産業省の調査団の一員として渡欧し、関係者から得た最新の動向を紹介しながら、EU ETSの実態と日本の政策に対する示唆について述べる。まずは前回に続き、制度面から詳しく説明する。
前編で述べた通り、国際競争力への配慮から、国際競争にさらされている一部業種では、フェーズIII についてもオークションの対象とはせず、効率のベンチマークに基づき排出権の無償配分を行うこととしている。そして、このベンチマークについては、業種ごとに二酸化炭素(CO2)効率上位10%の平均値とすることまでは排出権取引指令で決まっている。
現時点では、151の対象業種に52のベンチマークを設けることが決まっているようで、本年末に正式に発表される具体的なベンチマークの対象およびその値を巡り、各業種が欧州委員会に対して猛烈なロビイング攻勢をかけているところである。なぜなら、ベンチマークの対象製品と効率が決まれば、それに過去の生産実績値を乗じることで当該業種への割当総量が決まり、また、実態と離れた決め方をすれば、物理的に達成困難となるリスクがあるからである。
















