「シのゴの、言うな。すぐにやれ!」
経営者がこう発した瞬間、プロジェクトは直ちに動き出した。
2008年、秋の初めのことだった。スズキ会長の鈴木修(当時。同年12月から会長兼社長)は、“中小企業のおやじ”そのままに断固として、しかも速やかに命じたのだ。
プロジェクトの中身は、「スイフトのレンジエクステンダーを開発し、2010年5月までに(国土交通省の)型式指定を受ける」というもの。
決定を受けた、四輪技術本部第二カーライン長でスズキの世界戦略車「スイフト」のチーフエンジニア、竹内尚之は思わず身震いをしてしまう。
「これは、しんどいことになるぞ」と直感したからだ。というのも、2010年秋の発売を目指した新型スイフト(3代目)の開発が、佳境に入っていたためである。全力を傾注していた最中(さなか)、2代目スイフトをベースにした新しい環境対策車両の開発という予想しなかったテーマを、並行して進めなければならなくなった。
何より、レンジエクステンダー開発は世界の大手自動車メーカーが取り組んではいたが、先進国で型式指定を得た車両は1台もなかったのである。つまり、前例はなく、しかも、1年半強の短期間にやらなければならない。
現実を考えると、確かにしんどい。だが、竹内は、別の発想もする。
「これは、ある面でチャンスだ」と。
新しいジャンルなだけに、20代の若手を積極的に起用できる。つまり、若手技術者の成長につながっていく。そして、軽量化を中心に「これまで使われていない新技術を、思い切って投入できるだろう」と考えた。スズキの経営を支える登録車の「スイフト」や軽自動車の「ワゴンR」とは異なり、ある面でレンジエクステンダーは実験的な車両であったから。
















