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電子書籍についての考察(その7)君はベートーベンと戦えるか――電子時代の創作者の苦悩

松浦晋也「人と技術と情報の界面を探る」

2010年05月10日  RSS 

 電子書籍が本格的に普及すると、書籍の流通が根本的に変わることになる。

 現在の書籍流通には取次という大問題が存在する。現在の書籍流通は出版社からトーハン、日本出版販売(日販)といった取次業者を経由して書店に配本されるという仕組みになっている。この取次制度がさまざまな問題を内包しているのだ。しかし、ここでは取次の問題については触れないことにする。問題が複雑かつ多岐にわたる上、すべては紙の本についての問題であって本稿の主題である電子書籍とは関係ないからだ。取次の問題は、紙の本から電子書籍への移行が進むにつれて自然に消滅していくだろう――私はそのように見ている。

 紙の本から電子書籍へ切り替わることにより発生する、ユーザーの側から見た最も大きな変化は、「基本的に品切れがなくなる」ということだろう。印刷した紙の本は、売り切れてしまった場合、出版社が「もっと売れる」と判断して増刷しなければ、それっきりとなる。しかし、電子データである電子書籍は売り切れるということがない。著者の意志でサーバー上にデータが置いてある限り、販売が続く。

 このことが、本の著者にとっては、非常に大きな変化を呼び込むことになるだろう。一言でいうならば、ライバルが増えるのだ。それも半端ではなく。新たな作品を世に問う著者は、過去の数多の傑作やベストセラーと同じ土俵に立つことになるのである。

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