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伊藤洋一:クライメートゲート事件が示唆するもの

伊藤洋一の『BRICsの衝撃』

2010年04月19日  RSS 

 日本ではそれほど騒がれないが、昨年の末からずっと欧米ではいわゆる“クライメートゲート”に関する記事が多く掲載されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が採用した地球温暖化の有力な証拠とされるデータに、ねつ造の疑いがあることが分かった問題だ。

 当時のニクソン大統領の辞任にまで発展したウォーターゲート事件をもじって、「クライメートゲート(Climategate)」と表現される。このコラムを書いている人間として、この問題には無関心でいられないので、今回はこの問題を取り上げる。

 “クライメートゲート”疑惑の舞台となったのは、国際的な温暖化研究の拠点の1つとして名前を知られる英国のイーストアングリア大学である。何者かが同大学の気候研究ユニット(CRU)のコンピューターに侵入して、1996年からCRUが外部とやり取りした1000通以上の電子メールをハッキングした。それがいくつかのルートを通じて温暖化懐疑派のブログなどに流出し、その結果これらのメールの内容が外の世界に明らかになったのだ。

 一番注目されたのは、地球の温暖化を端的に示すものとして世界中で引用されることが多かった「ホッケースティック曲線」を巡るものだ。この曲線は、過去1000年間にほぼ横ばいだった地球の気温が、CO2など温室効果ガスの排出が増えた20世紀後半になって急上昇したことを示す。その温度推移のチャートが形状としてホッケーのスティックのようになっていることからそう呼ばれる。この曲線はIPCC報告書でもたびたび引用された。説得力がある図故に頻繁に世界中で引用されたが、その反面であいまいなデータ処理が以前から問題視されていた。

 流出した多数のメールの中には、CRUのフィル・ジョーンズ所長が20世紀半ば過ぎからの気温下降を意図的に隠すことで、80年代からの世界的な気温の上昇を誇張するデータにごまかし(trick)があったことを示唆したものがあった。同所長らは、同研究所から流出した電子メールが“本物”であることを認めたうえで、疑惑について声明を発表して、使われた単語としての「trick」は「新データの追加を意味する言葉」で、データ全体をごまかしてはいないなどと釈明した。


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