一連の品質問題が表面化する以前に,トヨタ自動車社長の豊田章男氏は「救世主は私ではない」と語った。確かに同社の優秀な社員は「宝」だが,その宝を生かせるかどうかはやはり豊田氏にかかっていると,モジュラーデザインの第一人者でトヨタ研究家でもある日野三十四氏は指摘する。アジアの新興勢力が追い上げてくる中,トヨタはどう再生を果たせばよいのか,そして製造業各社が今回の問題から学べることは何なのか,同氏に解説してもらった。(日経ものづくり)
「企業が凋落(ちょうらく)していく過程は5段階ありますが,トヨタは今,その4段階目に来ていると思います」。2009年10月,トヨタ自動車の社長である豊田章男氏は,日本記者クラブ主催の講演でこう語った。この「企業凋落5段階説」は,『ビジョナリー・カンパニー』で有名なジム・コリンズ氏が著書『How the Mighty Fall』(HarperCollins,2009年)に書いているものだ*1。著書名は,「偉大な企業はいかにして凋落するか」というところか。トヨタが危機的な状況にあることを,章男氏自身は認識していた。
企業凋落5段階説の中身は,以下の通りである。
- 第1段階:成功体験から生まれた自信過剰
- 第2段階:規律なき規模の追求
- 第3段階:リスクと危うさの否定
- 第4段階:救世主にすがる
- 第5段階:企業の存在価値の消滅
章男氏は続けて言う。「『第4段階』からでも復活はできます。その鍵を握るのが人材(社員)です。救世主は私ではありません」。最後の一言は余計だが,確かにトヨタの人材は依然としてトヨタの宝であり,トヨタ復活の原動力である。
















