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環境

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氷河の絶景、パタゴニアの謎

2010年02月24日  RSS 

 1925年、南米チリ南部の人里離れたフィヨルドの入り江に、一人の不屈の意志をもつノルウェー人が住みつき、草原が広がる周囲の渓谷地帯でヒツジの放牧に取り組んだ。だが1年後、押し寄せてきた氷河に、文字通り放牧地を追われた。

 放牧地があった場所には、現在、氷河湖が広がっている。「ピオ11世氷河」と呼ばれているこの氷河は、いっとき後退したものの、その後また前進してきた。氷河が森を根元から押し上げ、ゆっくり脇へと追いやっている。なぎ倒された木々に沿って茂る、樹齢数百年のチリヒノキは、傾いたまま静止したように見える。根は地表に飛び出し、樹冠は引きちぎられ、幹はばらばらに傾いている。巨大な氷河の塊がコケに覆われた地面を押し上げている。

 ピオ11世氷河に押しやられた森林は、山岳地帯でよく目にする木立に似て、強風でひしゃげた形をした、盆栽のような樹木が生い茂る。それも当然で、パタゴニア・フィヨルドと周辺の島々は、「吠(ほ)える40度帯」(ロアリング・フォーティーズ)と呼ばれる、南緯40〜50度の間の強烈な偏西風が吹き荒れる海域の中心部に位置し、絶え間なくすさまじい強風が吹き荒れ、雨や雪が1年中降り続くこともある。 地球の地形はどこも絶え間なく変化しているが、時間の歩みが遅く景観が静止したように感じられる。だが、氷河に浸食されたチリの沿岸部は、時間の経過を高速で早送りして見るような、大地のダイナミックな変化を肌身で感じることができ、休みなく活動する地球のエネルギーが体感できる場所だ。

 地殻を構成する海洋プレートは南米大陸の沿岸部の地下に沈み込み、アンデス山脈を押し上げていて、地殻運動が旺盛な一帯を形成している。氷原の奥からは何本もの氷河が激しい勢いで海に注いでいる。沖合では、海底から湧き上がるペルー海流が海の生命を育み、迷路のような水路が縦横に走る海岸線の長さは9万キロに達する。同じパタゴニアでも、この場所は広大な大草原が続いている内陸部のパタゴニアとは異なり、海と氷河に彩られたパタゴニアなのだ。


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