「オオカミ少年」
福江晋二は、社内でこう呼ばれるようになっていた。潰すことができる軽量ペットボトルの採用は決まったものの、決めなければならないことは山積していた。
ある期日までに決めますと言っておきながら、「もうちょっと待ってください」を繰り返したためである。スケジュール面で、本来なら決定していなければならない重要案件が、何度も先送りされていたのだ。とりわけ、ネーミングやパッケージデザインをどうするか。問題だった。
発売は2009年5月と決まっていた。発売まで半年を切った2008年のクリスマス。福江たち3人は、クリエーティブ担当の男性のマンションに集まる。懸案であるネーミングをいよいよ決めるためだった。
福江は、ワインを買って持参する。4人は飲みながら、パンをかじりながら、議論を始めていく。
候補として、物事の始まりを表す「いろは」というアイデアはあった。商品化後のテレビCMでも使われた「1、日本の2、おいしい3、しぼれる」に通じる着想だったろう。
だが、「いろは」だけでは、どこか物足りない。話し合いが続く中で、「『す』をつけてみたら」という意見が出る。
これなら「ロハス(健康と持続可能性のライフスタイル)」とも、語呂が重なる。ロハスはそのまま訳せば「生き方」を表す言葉だった。が、定義は曖昧(あいまい)となっていて、環境などの関連する商品やサービスを指す言葉として使われていた。
「い・ろ・は・す」のネーミングは、こうして決まっていく。
だが、問題はまだ残っていた。
















