(前回から続く)
CS化成の2階の会議室。月に1回開催される定例経営会議において,営業部門からの開発依頼に関して議論されている。太田電子からの要望で,新しいスイッチの受注を目指す営業部門。ただし,価格が安く,粗利60%を目指すという会社の方針を満たすのはかなり難しい。
「量産すると在庫品が増える危険がありますね。ということは,量産による製造コストの低減は難しいですね」と製造部長がやや悲観的に言った。製造部長の脳裏には,昨年末の棚卸で見つかった1000万円にも及ぶ不良在庫が浮かんでいる。
「競合はどうですか」と管理部長が質問した。営業部長が答える。「今,競合の前田ケミカルが大田電子に見積もりを出しているようです。価格競争は厳しくなると思います。つまり,長期的にも価格が低下する傾向にあり,粗利が良くなるのは,かなり難しいと予想されます」。
会議室に重苦しい空気が漂う。沈黙が続く中,社長が口を開いた。「皆の意見をまとめると,この開発は利益率,供給体制の点から,当社の開発経営方針にそぐわないということだね。残念だが今回は諦めよう。長年の付き合いがある太田電子からの依頼とはいえ,会社の方針を簡単に曲げるわけにもいくまい。開発依頼を提出した営業部員には申し訳ないのだが,十分納得するよう話してくれないか」。
















