「豁達」――。警備業大手セコムの社内には、至る所に墨痕鮮やかな達筆で書かれたこの2文字が掲げられている。「フータ」と読むこの2文字の意味するところは「心ひろやかに、明るく、小さなことにこだわらないさま」。セコムの持つ新進の気風をよく表す言葉だ。それは、警備から発して医療、福祉、情報システム、保険など失敗を恐れずに新たな事業に挑戦し続け、永遠のベンチャーたろうとする伸びやかな精神を表す。
セコムの社内では、萎縮する部下に向けて上司が今も言う。「フータでいこう」。今日その声は、まるで世界同時不況で萎縮する企業社会全体に向けられているかのようにも聞こえてくる。
「日経ビジネス」2月23日号の「改革の研究」でセコムを取り上げたが、このシリーズでは、セコムが挑戦する各事業と、それを切り開く「フータ」な人々を紹介していく。第2回目となる今回は、老人ホーム事業を紹介したい。セコムの子会社が運営する「コンフォートガーデンあざみ野」(横浜市)を訪ねた。
(文中敬称略)
冒頭から私事にわたって恐縮だが、記者は数年前まで定年退職者向け雑誌の編集部に所属していた。取材のために介護施設や老人ホームの現場には何度か足を運んだが、そんな中で身についた嫌な処世術がある。福祉・介護の現場では「ビジネス」という言葉を口にすべきではない、というものだ。
運営母体が一定の利益を出し、サービス提供者に相応の報酬が支払われる「ビジネス」としての健全性がなければ、事業は持続可能なものにならないはずだ。ところが福祉・介護などの分野を取材していると、収益が立つはずのない事業構造を、個人の無償に近い奉仕によってかろうじてカバーしている現状によく出くわす。

















