乗り移り人生相談

2009年11月19日

【26】女の結婚詐欺師はブーちゃんと相場が決まっている

女から寄ってきた時は危ないと思え

シマジ 種族保存の本能ではないかね。動物のメスは自分の遺伝子を残すためにより優秀なオスを選ぶだろ。オスはとにかくあちこちにタネをばら撒ければいいから、そんなに選り好みしない。人間のメスも同じだろうね。自分の容貌はさておき、背が高くてイケメンで頭のいい、つまり子どもの生き残り確率が高くなるような男のタネを手にしろと本能が囁くのではないかな。

 それゆえ結婚詐欺男の吹く大ボラは、スケールが大きいほど女にとって魅力的に聞こえる。そこに女性をお姫様のように持ち上げて夢見心地にする巧みな話術と、快楽の極地にまで運んでくれる閨房術を加えて女を虜にする。だから、男の結婚詐欺師はサービス業かもしれないな。女性も薄々おかしいと分かっているのだろう。これだけの悦びを与えてくれる男なら、詐欺でも仕方ないというくらいの気持ちなのかもしれん。

ミツハシ 一方、婚活詐欺女の紡いだ物語は「学費が未納なので援助して」ですから夢がないですよね。金銭的な援助を施すということまで、自分が女性と結婚するためのリアリティーにつながるのだとしたら悲しいことですよね。

シマジ 日本の恋愛文化の貧困さの表れだよ。男と女のスリリングな駆け引きが不足しているから、こういう事件が起きる。大企業の社長になるような人間でも同じだよ。以前、ある会社の偉いさんから相談を受けたことがあってね。ハニートラップに引っかかったというんだ。

 その人には、行きつけの飲み屋があってね。いつ頃からか、きれいな女性の一人客をよく見かけるようになった。ある時、女性が声をかけて来たんだ。「よくお会いしますね」くらいの当たり前のセリフだったらしい。それがきっかけで仲良くなり、やがて男女の仲となった。そして2人してホテルの部屋に入るところを写真に撮られたというわけだ。

 これが全部、ライバル陣営の仕込みだった。あらかじめ、よく行く店を探り出し、好みのタイプの女性を送り込み、怪しまれないように自然と仲良くなっていく。そしてパチリだ。

 これだけはミツハシに言っておくぞ。いや乗り移り人生相談の全男性読者に告ぐ。女から寄ってきた時は危ないと思え。自分から「あなたが好きだ」とアピールした結果、女性からOKのシグナルが返ってきたという時以外は警戒した方がいい。

 この偉いさんは「全然、不自然な感じではなかった。今でも信じられないくらいです」なんて言うから、訊いたんだよ。「それまでの人生の中で、あんな美人が自分からあなたに声をかけてきたことが何度もありましたか?」って。「いやあ、一度もないですね」と言うから、「一度もなかったことが起こったのでしょ。もう十分不自然じゃないですか」と言ってあげたよ。偉くなるとこうした罠が待っているから、順調に出世している男性諸君は十分に気をつけるように。

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著者プロフィール

島地 勝彦(しまじ・かつひこ)
島地 勝彦 1941年生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。「週刊プレイボーイ」の編集長として同誌を100万部雑誌に育て上げる。その後、「PLAYBOY」編集長、「Bart」創刊編集長などを務める。柴田錬三郎、今東光、開高健、瀬戸内寂聴、塩野七生、荒木経惟をはじめとする錚々たる面々と画期的な仕事を重ねてきた伝説の編集者。2008年11月集英社インターナショナル社長を退き現在はコラムニスト。シガーとシングルモルトとゴルフをこよなく愛する。「人生は冥土までの暇つぶし」だと思っている。

このコラムについて

乗り移り人生相談

 これはただの人生相談ではない。何しろ今は亡き昭和の文豪たちが天国から降臨し、ある男に憑依してあなたの悩みに答えるのだから。
 その文豪たちとは次の三人である。眠狂四郎の生みの親、不羈の想像力で時代小説の新地平を拓いた柴田錬三郎氏。天台宗大僧正にして参議院議員そして直木賞作家…天衣無縫の怪物、今東光氏。世界を股にかけ珠玉の文章を残した行動派作家、開高健氏。彼らの言葉を口寄せするのは「週刊プレイボーイ」の編集者時代に、三文豪を回答者に据えて人生相談コーナーを担当した島地勝彦氏だ。柴田錬三郎氏には息子のように、今東光氏には孫のように、そして開高健氏には弟のように可愛がられた島地氏は、人生相談コーナーを通じて門前の小僧よろしく人生の様々な奥義を教えられた。
 島地氏は言う。「従って、シマジの言葉はシマジの言葉にしてシマジの言葉にあらず。剣豪作家シバレンの、今東光大僧正の、開高文豪の言葉なのである。心して聞けい」

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