「今の自分」を肯定できるようにする
白河 それは、香山さんが先ほどおっしゃったように(1回目参照)、「普通の幸せ」を通り過ぎてしまう、ということですね。
香山 そうですね。
子供がいる人の場合は、もう「子供がいるのが当たり前」になってしまって、「子供がいなかったら、こういう生活をしていた」「子供がいてくれるだけですごく嬉しい」というような、「もし、子供がいなかったら…」という発想が抜け落ちてしまうんです。
そういうことは患者には聞けないから、子育て中の友達に聞いてみたんです。すると、「そう言われてみれば、子供はいつもあまりにも身近にいるから、『もしいなかったら』なんて思えない」と言っていました。私は子供がいないので、よく分からないのですが…。
白河 人間は、「当たり前だと思っているものが自分に欠けていること」にストレスを感じますが、逆に「当たり前だと思ったものを手に入れたら、今度はそれが思い通りにならないこと」にストレスを感じてしまうものなのでしょうね。そして、「それが自分に欠けていた時のこと、それが欲しかった時のこと」をきれいに忘れてしまう、ということですね。
香山 そう、忘れてしまうみたいです。
白河 香山さんは、「どうしても結婚できない」「ほかのことはちゃんとやっているのに、結婚だけはできない」と言いながら、診察室に駆け込んでくる人に対して、精神科医としてどのようにアドバイスされているんですか。
香山 そうですね…。「結婚できないこと」に対するアドバイスはしませんが、「今の自分」を肯定できるようにはします。
白河 「今の自分」の持っているものを数えて肯定する、ということですか。

香山 ええ。そういう方には「すごく頑張っているじゃないですか」「お仕事されているのは、すごいことですよ」ということをお話しています。「結婚した方がいい、しない方がいい」ということはもう精神科の領域ではないので、そこには触れません。
そういう方たちは「今の自分」を、客観的に見た状況より卑下し、否定してしまっているところがあります。結婚できないことをすごく大きな問題として捉えていて、「仕事していること」「自立していること」ということをすべて、「つまらないこと」「取るに足らないこと」というぐらいに自己否定してしまっている。そこをまず回復させます。
自己肯定感が回復した後で、それでも結婚したければすればいいし、「結婚しなくてもいいかも」と思うのであれば、結婚しなくてもいいと思う。私は少子化対策委員とかではないので、それはもう個人の自由だと思います。











