白河桃子「女と男の新しいシステム」

2009年11月20日

“未婚ストレス”の原因は、無償の愛を求めすぎ

『しがみつかない生き方』著者・香山リカさんに聞く【3】

前回に引き続き、精神科医・香山リカさんをゲストにお迎えします。
今回は、「未婚であることのストレスを抱えてしまった時の対処法」や、「無償の愛を求める人が増えていること」について、語り合っていただきます。

日本女性は、「努力」が好き

白河 去年、今年と婚活ブームが起きました。

 私が山田昌弘先生(中央大学教授)との共著・『「婚活」時代』で伝えたかったのは、「今までの日本には『自動的に結婚できるシステム』があった。そのシステムが崩壊した今、結婚したいのであれば自分から動く必要がある」ということでした。

 でもいつの間にか、「婚活」の意味が独り歩きするようになって、「条件のいい男性を狙う女性のための戦略」や「結婚するためには結婚情報サービスを使わなきゃいけないもの」というふうに、誤って認識されるようになってしまったんです。

 今までの日本では、「結婚は自然にできるものだから、別に努力しないでもいい」と考えられていました。ところが、婚活を提唱して「結婚にも努力が必要だ」という概念を与えてしまったことによって、そのために葛藤する人がいることも事実です。婚活ブームには良い点もたくさんありますが、私には「寝た子を起こしてよかったのか?」という罪悪感もあるのです。「結婚したいのにできない」という“未婚ストレス”を抱える人が増えてしまったのでは、と…。そういう人たちに対して、どのようにアドバイスすればよいのでしょうか。

香山 リカさん
1960年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医。立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床経験を活かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー評論など幅広いジャンルで活躍する。 『親子という病』(講談社)、『「私はうつ」と言いたがる人たち』(PHP研究所)、『スピリチャアルにハマル人、ハマらない人』(幻冬舎)、『いまどきの「常識」』(岩波書店)など、著書多数。近著に『しがみつかない生き方』(幻冬舎)。

香山 “未婚ストレス”について考える前に、先ほど述べたように(前回参照)、「婚活はゴールではない」ということを認識することが大事だと思います。「結婚してから」が肝心なのに、「結婚したこと」で達成感が訪れて、その先のことを考えていなかった…というのは本末転倒ですよね。

白河 確かにそうですね。私は時々、こんな相談を受けるんですよ。「一生懸命婚活して結婚したのはいいんですけど、その先どうしたらいいのか分からないので、マニュアルを書いてください」と。そこまでマニュアルを書かなくてはいけないのでしょうか(笑)。

香山 日本の女性は、努力することが好きなんですよね。

白河 ええ、そう思います。日本の女性はまじめですよ。

香山 「目標を定めて、それを達成するための計画を立てて、努力すること」が大好きなんですよね。今は結婚もそういう「努力の対象」になってしまったから、「結婚とは、戦略や計画を立てて努力すれば、手に入るもの」と捉える女性が増えているのは、納得できますね。

白河 結婚は結果が出せるものですからね。日本人のまじめさに、「婚活」という言葉がヒットし過ぎてしまったのかもしれません。

香山 そうですね、特に女性にヒットしたのでしょうね。

 そういう意味で、「不妊治療」と「婚活」は似ていると思います。病院に勤めていると、不妊治療のために婦人科に通っていた人が、出産後に、今度は育児ノイローゼになって精神科に通院するというケースを目にすることがあるんですよ…。

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著者プロフィール

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ジャーナリスト&ライター。
「日経ビジネスアソシエ」「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」ほか、多数のビジネス誌や女性誌に執筆。女性たちの年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化、働く女性のインタビューがテーマで、結婚情報サービス業界の取材では第一人者。山田昌弘中央大学教授と共に「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が17万部のヒットに。「婚活」は2008年度流行語大賞にノミネートされるほど世の中に影響力を持つワードとなり、今日も注目されている。
主な著書に『「キャリモテ」の時代』(日本経済新聞出版社)、『跡取り娘の経営学』(日経BP出版センター)、『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』(PHP研究所)、『恋愛氷河期をのりきる本!』(メディアファクトリー、文・白河桃子、漫画・ただえりこ)など。
現在、日経ビジネスオンラインで、『“キャリモテ”の時代』連載中。また、結婚活動ポータルモバイルサイト「婚ナビ!」を監修している。
公式ブログはこちら

このコラムについて

白河桃子「女と男の新しいシステム」

 少子高齢化が急速に進行しています。日本の2008年の合計特殊出生率は1.37。昨年の1.34を上回り3年連続で上昇したものの、出生数自体は横ばいで、少子化傾向に歯止めがかかりません。

 結婚・恋愛・少子化をテーマに取材を続けるジャーナリストの白河桃子さんは、「日本の少子化は、男と女のシステムが壊れていることが原因。結婚の前も後も男女間の関係づくりがうまくいっていない」と指摘します。

 日本の少子化対策には何が必要なのか。そして、どうすれば多くの人が安心して仕事をし、子供を育てられる社会になるのか。このコラムでは、白河さんと様々な識者が対談をしながら、これから必要になる女と男の新しいシステムを考えていきます。

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