白河桃子「女と男の新しいシステム」

2009年11月6日

「普通の結婚」が、手に入りにくくなった理由

『しがみつかない生き方』著者・香山リカさんに聞く【1】

「私たちだって好きで産まなかったわけじゃない」

香山 でもそれがしにくかったのは、私たちの世代の場合は、社会的な圧力があったからなんです。繰り返しますが、均等法第一世代の女性の中には「職場と約束したからには結婚しません」と誓い、それを守ってきた人がたくさんいました。でもその結果、「仕事に生きてきて良かった」と言える人は少数派で、「やっぱり失敗だったかも」「取り返しのつかないことをしちゃった」と思っている人も多いと思います。

 こういう背景から考えると、私は日本が少子化社会になったのは当然だと思いますよ。

 でも、結婚も出産もせず、仕事にまい進してきた均等法第一世代の女性たちが、「少子化の元凶」のようにされるのは納得しがたいものがありますね。ある総理大臣経験者が発言したように、「子どもを産まなかった女性が自由を謳歌して、老後は年金で面倒を見ろというのはおかしい」なんて言われると、すごく肩身が狭いじゃないですか。私自身、子供がいないからその気持ちがよく分かるんです。

香山リカさん(右)と白河桃子さん(左)

白河 生まなかったのは社会や会社の風土のせいで、女性たち自身のせいといわれても、それは違うだろう、という感じですよ。

香山 そのことを褒めてくれとは言いませんが、「頑張って女性の社会進出に貢献してきましたね」というふうに、もうちょっと評価されてもいいんじゃない? と思うことはあります。口さがない知人は、「私たちだって好きで産まなかったわけじゃない。ましてや、自分のためにお金を使いたいから産まなかったんじゃない。だってあの時、結婚も出産もするなって言ったじゃない」と愚痴ったりしているけど、それを口に出してしまうと、人のせいにしているみたいですよね。だから、大半の女性はぐっと我慢しているんです。

 女性の生き方や働き方について考えてみると、そのロールモデルがなかなか決まらない中で、みんなが右往左往して、その時代時代で踊らされて来たことがよく分かりますね。

(次回に続く)

今回の提言
・普通の幸せから「脱落」するか、または頑張りすぎて普通を「通過」してしまうか、二分化している時代。
・「結婚とは何ぞや?」と問い始めると禅問答のようにキリがなく、より結婚できない。
・均等法第一世代が「産まなかった」理由の1つは、社会的圧力があったから。ぐっと我慢して仕事をしてきたその世代の社会的貢献が、もっと評価されてもいいのではないか?
(構成/藤井マキコ、写真/菊池くらげ)

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皆様からお寄せいただいたご意見

手に入りにくいものは普通と言わない。
「普通の結婚」は既に普通ではなく、更に理想をも過ぎた「夢の結婚」にかわった。
それに合わせて自分が変わらなきゃ。
いつまでもマインドが変わらない女性と結婚するのは怖いです。(女が怖い)(2009年12月04日 21:25)

男女ともに経済的独立を、という考え方は賛成なのですが、自分の環境を考えても、周囲の既婚友人を見ていても思うのは、とにかく女性は出産・育児期間は非常に働きづらい上、復帰も難しいということです。
たとえば二歳違いで2人産めば最低4年くらい、預けられる経済力か環境がなければ下の子が小学校に入るまでとして、10年以上女性は働けません。
またある程度以上の企業の正社員でなければ復帰も難しいでしょうし、派遣や契約社員なら妊娠の時点で解雇です。
今の社会制度で、子育てをしながら経済的独立を続けられる女性は、両親の協力など子育ての環境に恵まれ、そこそこの企業に正社員として勤めている、(それも専門職や総合職)、あるいは公務員などのごく一部の限られた女性ですが、それでも夫に経済力がなければ、子育て期間本当に大変です。なにせ育児期間、妻は無給になりますから。友人夫婦で妻の方が経済力が上だった夫婦がいますが、妻が2人たて続けに子供を産んだので、今経済的に大変なことになっています。
今の社会情勢では、専業主婦希望でなくとも、2人くらい子供がほしいと思うなら、専業主婦と子供を十分養えるくらいの経済力と気概のある男性でないと普通の幸せどころか普通の生活も難しいのです。
私も一生働きたいとは思っていますが、出産と育児期間は支えてもらわないとどうしようもないですし、その後働くなら、家事育児に意欲的な男性でないと…と思うと、経済力と家事育児能力、両方を夫に求めることになってしまい、結果的に専業主婦希望より高望みになってしまうのではないかと思います。(non)(2009年11月25日 12:48)

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著者プロフィール

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ジャーナリスト&ライター。
「日経ビジネスアソシエ」「プレジデント」「日経ビジネスオンライン」ほか、多数のビジネス誌や女性誌に執筆。女性たちの年代別ライフスタイル、未婚晩婚、少子化、働く女性のインタビューがテーマで、結婚情報サービス業界の取材では第一人者。山田昌弘中央大学教授と共に「婚活(結婚活動)」を提唱し、共著の『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が17万部のヒットに。「婚活」は2008年度流行語大賞にノミネートされるほど世の中に影響力を持つワードとなり、今日も注目されている。
主な著書に『「キャリモテ」の時代』(日本経済新聞出版社)、『跡取り娘の経営学』(日経BP出版センター)、『「婚活」時代』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『あなたの娘や息子が結婚できない10の理由』(PHP研究所)、『恋愛氷河期をのりきる本!』(メディアファクトリー、文・白河桃子、漫画・ただえりこ)など。
現在、日経ビジネスオンラインで、『“キャリモテ”の時代』連載中。また、結婚活動ポータルモバイルサイト「婚ナビ!」を監修している。
公式ブログはこちら

このコラムについて

白河桃子「女と男の新しいシステム」

 少子高齢化が急速に進行しています。日本の2008年の合計特殊出生率は1.37。昨年の1.34を上回り3年連続で上昇したものの、出生数自体は横ばいで、少子化傾向に歯止めがかかりません。

 結婚・恋愛・少子化をテーマに取材を続けるジャーナリストの白河桃子さんは、「日本の少子化は、男と女のシステムが壊れていることが原因。結婚の前も後も男女間の関係づくりがうまくいっていない」と指摘します。

 日本の少子化対策には何が必要なのか。そして、どうすれば多くの人が安心して仕事をし、子供を育てられる社会になるのか。このコラムでは、白河さんと様々な識者が対談をしながら、これから必要になる女と男の新しいシステムを考えていきます。

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