「普通の結婚」が、手に入りにくくなった理由
『しがみつかない生き方』著者・香山リカさんに聞く【1】
精神科医の香山リカさんが、「普通の幸せを手に入れるための方法」を説いた本『しがみつかない生き方』は、そんな世相を反映するかのように、発売後すぐに話題になり、30万部を越えるベストセラーとなりました。
結婚によって、普通の幸せを手に入れることはできるのでしょうか。また、普通の結婚にこだわらなくても、男女が幸せになるためにはどういうシステムが有効なのでしょうか。
今回の対談は、現代人の心の問題を鋭い切り口でとらえ続ける、香山リカさんをゲストにお招きして、上記のテーマについて語り合っていただきます。
「普通の幸せが手に入らない人」は、二極化している
白河 香山さんのご著書『しがみつかない生き方』は、発売されてからすぐに読ませていただきました。
この本に詳しく書かれているように、今、「普通の幸せ」が実現しがたい世の中になっていると思います。私が取材で出会う婚活中の女性たちも、「普通の幸せが欲しい」「普通の結婚がしたい」と言うんです。でも今、それを手に入れるのが難しくなっていると感じます。
香山さんは、普通の幸せが実現しがたくなっている原因は何だと思われますか?
「普通の幸せ」に近づくための基本ルールとして、「しがみつかないこと」を提案。恋愛や子供やお金にしがみつかない、自慢をしないなど、自分のペースで生きていくための方法を指南する(2009年7月発行)
香山 私の診察室には、「普通の幸せが手に入らない」という方がたくさんいらっしゃいますが、今、そういう人たちは二極化していると感じます。
1つは、例えば「派遣切りにあった」「DV(ドメスティック・バイオレンス)に遭っている」「親が入院しているが、退院してくれと言われて行き先がない」というふうに、客観的に見て、本当に悲惨な状況にある人たちです。最近はこういう人が目立ってきています。
彼らだって今までは普通に努力して、それなりにやってきたはずです。でも今は、うっかり足をすべらせると、すぐにどん底まで転げ落ちてしまう。日常生活の中に、セーフティーネットがないんです。湯浅誠さんがご著書『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』で指摘されているように、“すべり台社会”になってしまっているのです。
ひと昔前は、とりあえず身を寄せる場所がどこかにあったものですよね。例えば、親戚の家に少しの間住まわせてもらうとか、中学時代の恩師に泣きつくとか…。泣きつかれる方は迷惑かもしれないけど、それでも「少しは助けてあげたい」という気持ちがあったように思います。でも今は、「まったく拠り所がない」という状況に置かれている人が増えつつあります。
白河 確かに今、社会に「すき間」がないですよね。生きていくすき間みたいなものが、全部閉ざされている気がします。
香山 そうですよね。診察室にいるとそう感じることがよくあります。例えば、「眠れない」という患者にその理由を尋ねると、「多重債務で首が回らない。サラ金からの電話で眠れない」とおっしゃる。
そうなるともう、精神科の範疇ではないので、法テラスや区役所の消費者センター、生活保護の福祉窓口などを紹介しています。そんな時、「そういう法的な機関にたどり着く前に、頼れる人はいなかったのかな?」と思うんです。友達や同僚、親戚の中に相談できる人がいたら、解決できることだってあるのに、と。
でも、そういう人たちに「頼れる人はいないの?」と聞くと、「誰もいない」とおっしゃるんですね。会社を辞めてしまったので、同僚の連絡先すら分からなくなってしまっている。







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