乗り移り人生相談

2009年10月1日

【番外編】ロマンチックな愚か者の魅力を味わってくれ

自著『甘い生活』を語る

森羅万象を自由奔放に語った一冊

『甘い生活 男はいくつになってもロマンティックで愚か者』(講談社、1575円)

アソシエ 今回は、通常の人生相談を一度お休みして、「番外編」としてシマジさんの新著『甘い生活』についてお伺いしたいと思います。こちらがその本ですが、表紙のイラストからして既にエッチですね。

シマジ いいだろ。これはなかだえり画伯の書き下ろしだ。この裸の女性が描かれているところには、瀬戸内寂聴さん考案の洒落たコピーの載った帯がかかるから、書店に並んでいる時には隠れている。帯を解くとおっぱいが現れるという趣向だ。

アソシエ これは腰巻とも言いますね。腰巻を剥ぎ取ると何が現れるんでしょう。

シマジ キミは下品だな。

アソシエ シマジさんがそれを言いますか? 「人類はどうしてゴルフとフェラチオが好きなのか」(同書188ページ)なんていうタイトルのエッセイを書く人が…。

シマジ エッチなサービスは読者のためにいっぱいしてあるよ。でも、どれだけエッチなことを書いても、下品にはなっていないはずだ。「人類はどうしてゴルフとフェラチオが好きなのか」というタイトルの一文は、米国の大作家、先年亡くなったカート・ヴォネガットの未完の遺作「国のない男」が下敷きになっている。

 地球にやってきた火星人がいよいよ帰ることになった。火星人は、地球人との別れ際、「どうしても分からないことが二つある」と言う。「あれって何が愉しいのですか? フェラチオとゴルフって」。このヴォネガットの旺盛な想像力への返礼として、私が考えたジョークも、この本の中で紹介している。

 下品にしない技というのは端的に言えば文体だ。これはシバレン(柴田錬三郎)さん、今(東光)さん、開高(健)さんから教えられた。どれだけ軽妙な話し言葉に近い文章を書いても、文豪たちの書き言葉は画然として話し言葉とは別のものになっていた。そうした文章に対する感受性というのは、やはり読書体験で決まるのだと思う。

 俺の書いたものを読んでくれて、俺の読書体験をぴたりと言い当てた方がいるんだ。資生堂名誉会長の福原義春さんだよ。福原さんとは古くからの「書友」でね。「あの本をもう読んだ?」「この本が面白かった」と毎日やりとりしている。その福原さんからある時もらった葉書にこうあった。「倉橋由美子・偏愛文学館という書評集を読んで、S・モームのコスモポリタンズなる短編集をたのしみました。そこで気がついたのですが、島地文豪の超短編にはモームのかくし味もあったのですね。おそまきなことですが」。

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著者プロフィール

島地 勝彦(しまじ・かつひこ)
島地 勝彦 1941年生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。「週刊プレイボーイ」の編集長として同誌を100万部雑誌に育て上げる。その後、「PLAYBOY」編集長、「Bart」創刊編集長などを務める。柴田錬三郎、今東光、開高健、瀬戸内寂聴、塩野七生、荒木経惟をはじめとする錚々たる面々と画期的な仕事を重ねてきた伝説の編集者。2008年11月集英社インターナショナル社長を退き現在はコラムニスト。シガーとシングルモルトとゴルフをこよなく愛する。「人生は冥土までの暇つぶし」だと思っている。

このコラムについて

乗り移り人生相談

 これはただの人生相談ではない。何しろ今は亡き昭和の文豪たちが天国から降臨し、ある男に憑依してあなたの悩みに答えるのだから。
 その文豪たちとは次の三人である。眠狂四郎の生みの親、不羈の想像力で時代小説の新地平を拓いた柴田錬三郎氏。天台宗大僧正にして参議院議員そして直木賞作家…天衣無縫の怪物、今東光氏。世界を股にかけ珠玉の文章を残した行動派作家、開高健氏。彼らの言葉を口寄せするのは「週刊プレイボーイ」の編集者時代に、三文豪を回答者に据えて人生相談コーナーを担当した島地勝彦氏だ。柴田錬三郎氏には息子のように、今東光氏には孫のように、そして開高健氏には弟のように可愛がられた島地氏は、人生相談コーナーを通じて門前の小僧よろしく人生の様々な奥義を教えられた。
 島地氏は言う。「従って、シマジの言葉はシマジの言葉にしてシマジの言葉にあらず。剣豪作家シバレンの、今東光大僧正の、開高文豪の言葉なのである。心して聞けい」

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