「お金があれば何でも買える」と語った若手起業家は表舞台から消え、米国発のグローバル金融は、笑っちゃうほどの弱点を世界中にさらした。農業と工業の区別もなく、市場をより大きくし、より巨額のお金を流通させることに、世の中はずっと躍起になってきた。今まではGDPやお金が「豊かさ」の基準だったからだ。
そして私たちは忙しくなり、家族と食卓を囲み、趣味を楽しむような日常を失い、生活の質は低下した。その憂さを晴らすかのような消費に、束の間、我を忘れてきた。
『浪費するアメリカ人』(2000年、岩波書店刊、森岡孝二訳)の中で、米国人経済学者ジュリエット・B・ショアは、1990年代後半の米国で、次のような人たちを「減速生活者(ダウンシフター)」と呼んだ。
「過度な消費主義から抜け出し、もっと余暇を持ち、スケジュールのバランスをとり、もっとゆっくりとしたペースで生活し、子どもともっと多くの時間を過ごし、もっと意義のある仕事をし、彼らのもっとも深い価値観にまさに合った日々を過ごすことを選んでいる」(同書から抜粋)
その多くは転職を経験して減収になり、素敵なレストランへ行ったり、ブランド品を買ったりする回数も減った。それでも減速生活者には価値あるギアチェンジだったという。
一方、日本では、GDPが戦後最大の下落率(2009年1−3月期)を記録し、多くのビジネスパーソンが減収を余儀なくされそうだ。従来の「豊かさ」の基準が大きく揺らいでいる。そんな今、自分なりの新たな基準を見つけ、それに合った仕事と生活を手に入れた日本版「減速生活者」たちの軌跡を紹介する。
(取材・文/荒川 龍)






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