全盲のピアニスト、辻井伸行さんが権威ある国際ピアノコンクールで優勝した。
20歳にして快挙を成し遂げた天才は、果たして早咲きなのか?
天才と呼ばれる人物には、共通する訓練時間と環境要因がある。
天才は、どのような要件を満たすと生まれるのか。今回は音楽家のニュースを題材に考えていきたいと思います。
6月に米国で開かれた「バン・クライバーン国際ピアノコンクール」で、日本人の全盲ピアニスト、辻井伸行さん(20歳)が優勝しました。
生まれつき全盲だった辻井さんは、4歳から鋭敏な音楽感覚を示し、ピアノを本格的に習い始めました。7歳の時に「全日本盲学生音楽コンクール」のピアノの部で1位になり、10歳の時にはオーケストラと初共演、プロデビューします。その後、国内外の演奏会に出演し、2005年の17歳の時には「ショパン国際ピアノコンクール」で「批評家賞」を受賞します。2007年に発売したデビューCD「début」は、今回のコンクール優勝を機にオリコンチャートを駆け上がり、6月29日にはピアニストのデビュー作としては歴代最高位の2位まで上昇しました。
辻井さんの特徴は、何と言っても「早咲き」であることでしょう。20歳にして、既に一流の音楽家として活躍しているのです。しかし、ここでよく考えてみたいのが、本当に早咲きかという点です。
というのも、辻井さんは10歳でプロデビューをしているわけですから、かれこれ10年のキャリアがあります。そう考えると、早咲きどころか、ごくごく普通のキャリアなのかもしれません。
実はこれはモーツァルトも同じです。16歳頃から宮廷音楽家として活躍しましたが、3歳からピアノを弾き始め、父親の厳しい訓練を受けていたことを考えると、むしろ「遅咲き」と言っても過言ではないのです。
同じように、日本で若くして活躍するスポーツ選手たち、例えば史上最年少の男子プロゴルファー、石川遼さんも、6歳からゴルフを始めていますし、女子プロゴルファーの宮里藍さんも4歳から練習をスタートさせています。つまり私たちが、辻井さん、石川さん、宮里さんなどを「天才少年」「天才少女」と認識するまでには、共通して10年以上の長い訓練期間があったわけです。
この背景には「1万時間の法則」と呼ばれるものがあります。すなわち、ある才能が開花するまでには、おおよそ1万時間の訓練が必要だという目安です。1日3時間訓練したとして、10年間続けると、ようやく1万時間を超えます。
『天才! 成功する人々の法則』を著した米国のライター、マルコム・グラッドウェル氏は、アイスホッケー選手、サッカー選手、バイオリニスト、ピアニスト、作曲家、小説家など、様々な分野のプロで世界的なレベルに達した人には、例外なく1万時間の訓練期間があったことを指摘しています。
ザ・ビートルズも下積み時代に、ドイツのハンブルクのストリップ劇場で1日8時間以上、約1200回ものライブをこなしていました。ビル・ゲイツ氏は中学2年生の時に初めてコンピューターに触れて以来、大学を中退するまで日夜、プログラムの開発にのめり込んでいました。ザ・ビートルズもビル・ゲイツ氏も、訓練期間は1万時間を超えています。
この時間は、私自身の経験や部下を見てきた実感と一致しています。コンサルタントが自分でフレームワークを作れるようになるには、おおよそ3年強かかります。計算すると、現場での勤務時間がちょうど1万時間を超えてきた頃なのです。






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