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丸の内のアントレプレナーたち

「竹」から生み出す健康・安心

タケックス・ラボ 清岡久幸【1】

Associe

 古くから日本人の生活と密接にかかわってきた「竹」を有効活用し、抗菌剤や建材などの商品開発をしているタケックス・ラボの清岡久幸さん。限りない可能性を秘めた竹に込める彼女の思いは、竹のように真っすぐだ。

 「事業の基点は、家業が竹細工の工房だったので、竹に囲まれた生活が自然だったこと。竹の中から生まれたらよかったんですが…」

 そう言うと、清岡さんは、ふわりと笑った。柔らかく、静かに語るその姿は、事業への情熱を売りにするベンチャー起業家のイメージとは、異なる。

 しかし、清岡さんには固い信念がある。身近にある竹を使えば、人々が健康で安全な生活できる。そして、壊れゆく地球環境も改善できる──と。

 西日本に自生するモウソウチク(孟宗竹)を原料とした製品を研究開発しているタケックス・ラボは、表皮から抽出した抗菌・除菌剤や食品添加物から、竹の機能を活かした建材までを商品化し、売り上げを伸ばしている。

 「竹を使って何かできないか、と思ったのが昭和58(1983)年ですから、長い時間をかけてしまいました」と、清岡さんが語るように、その道のりは一直線ではなかった。

10代で経験した大病がきっかけに

 竹職人として、干支の置き物や土産物を作る会社を経営していた父の下、清岡さんは、高知県で生まれ育った。将来、旅客機の客室乗務員になることを夢見ていた彼女を、腎臓の病、ネフローゼ症候群が襲ったのは17歳、高校2年生の時だった。

 「成人式は迎えられない、と医師から親は言われたそうです。死と直面しながらの入院生活は2年半にも及びました。入院した小児病棟では、私自身も非常に苦しみましたが、それと同時にアレルギーや小児ガンなど重い病気と闘っている子供たちの姿、そして子供の臨終に立ち合わなければならないお母さんたちの想像を絶する苦しみを見たり、聞いたりしました」

 入院する子供を見舞う母親たちは、運命に嘆き、悲しみに暮れ、そして、休憩室の椅子に座っている清岡さんにこう漏らしたという。「子供の健康を守ってやれなかった」「添加物の多い食品を食べさせた自分が悪い」…。
 
 「私は運良く病気を克服し、退院できましたが、食の安全性、さらには環境がどれだけ大切なのかという思いが、胸の中で大きな塊になっていました」

 退院後、リハビリをかねて、父親の会社の工房を手伝っていた清岡さんだが、青春時代を過酷な病苦と闘ったこともあり、人生の目的を見失っていたという。そんなある日、工房で働く職人が発した言葉を耳にした。「しまった。竹の皮を剥いだまま食事に行ってしまった」。

 「最初は、何を言っているのかと思ったのですが、皮をむいた竹は数時間でカビが生えてしまうのです。職人さんは、それを体験的に知っていたのです」

 竹の表皮には、カビの発生を防ぐ作用があるという事実。そして病院で出会った、子供たちの健康を守れなかったと嘆き苦しむ母親たちの姿──。清岡さんの中で、点と点がつながった。

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