text by 種本 祐子(たねもと ゆうこ) ヴィノスやまざき専務
1987年ヴィノスやまざき入社。現在、同社の専務。世界のワイン生産者を自分の足で回り直輸入した「蔵直ワイン」を販売するワインショップ「ヴィノスやまざき」を経営。その傍らワインセミナーを開催したり、ワインガイドブックを執筆したりするなど多彩に活躍。日本ソムリエ協会認定シニアワインアドバイザー。
昔はワインが嫌いだった。というより怖かった。レストランでワインメニューを見る時は緊張し、ワイン売り場で店員から声をかけられそうになると逃げるようにその場を立ち去った。そんな昔の私と同じような思いを抱いている人は多いだろう。
しかし、実はワインは難しいものではない。農業者が一生懸命に仕事をして作る“農産物”なのだ。例えば、シャンパンとは、フランスのシャンパーニュ地方のワイン、ボージョレ・ヌーボーはボージョレ地区の新酒、ブルゴーニュ・ピノノワールといったらブルゴーニュ地方でピノノワールというブドウ品種を使って作られるワインを指す。
つまり、お米に例えると「新潟産のコシヒカリ」と同じことなのだ。そう思うようになってから、ワインは難しく学ぶものではなく、楽しむものなのだと伝えることにした。
一方で、ワインを知れば知るほど、語りたいことが増えてくるのも事実。それは生産者の情熱であったり、一本のワインに伴うストーリーであったり。ありきたりな言葉だが、ワインは実に奥が深く、時には感動さえ覚える飲み物なのだ。
今回は、ワインは苦手という人に、これらを読んだら、ワインをもっと知りたくなり、飲みたくなるという5冊を選んだ。ワイングラスを片手に読んだら、ワインもさらにおいしくなるだろう。
ワインにはドラマがある

『ワインと戦争』 ドン&ペティ・クラドストラップ著、村松 潔訳、飛鳥新社
『ワインと戦争』は、ともにジャーナリストであるクラドストラップ夫妻が第2次世界大戦中に、戦争からワインを守ったワインの生産者や商人などに取材して書き綴ったノンフィクションである。タイトルに引かれて読み始めたが、紛れもなくこの本はワインのガイドブックではなく歴史書である。
ブドウとワインを守るためにナチスと戦った人々のストーリーは映画のようにドラマチックだ。数ページ読むと一気に引き込まれる。知らない間にワインに興味を抱き、読み終わる頃にはワインが身近な存在になっている。訳者の村松潔氏は『マディソン郡の橋』などの翻訳を手がけた名翻訳者。映画を見るような感覚で読める文体は、最後まで読者を飽きさせない。

『サイドウェイ』 レックス・ピケット著、ソニー・マガジンズ
小説では『サイドウェイ』がお薦めだ。数年前に映画化された時は、米カリフォルニアで作られるピノノワールワインの人気が急上昇し、価格も高騰した。さらに高騰はブドウ市場にまで及んだという。
ストーリーは、2人の中年男性がカリフォルニアのワイナリーを訪ねてテイスティングする道中に起きるちょっとしたロマンスや、悲哀を描いたもの。
すいすいと読め、知らぬ間にカリフォルニアのワイナリーの魅力に引き込まれる。今やカリフォルニアワインは、フランスワインに並ぶほどの人気。ナパバレーなどのワイナリーは観光客で溢れ返っている。この本を読めば、カリフォルニアワインの魅力にハマってしまうだろう。
さらに、ピノノワール好きはワイン通が多いと言われるが、ワイン初心者でもこの本を読んだら、ピノノワールのワインを飲みたくなるはずだ。

『神の雫』 亜樹 直作、オキモト・シュウ画、モーニングKC
2009年1月から、ジャニーズの亀梨和也主演でテレビドラマ化される大人気ワイン漫画がある。その名も『神の雫』。ワインが苦手な主人公、雫が運命のワインを探す過程で、様々なワインと出会っていくというストーリー。ワインを全く知らない人でもとにかく面白く、あっという間に読め、すぐに続きを読みたくなる。
何と、この漫画、日本だけではなく韓国でもブレークしており、ペ・ヨンジュン主演でドラマ化が計画されている。日本では亀梨君が、韓国ではヨン様がワインを語るとなれば、2009年は日韓でワインブームが起きるに違いないと、私は踏んでいる。
いや、日韓だけではない。実はこの漫画、ワインの本場であるフランスでも翻訳されてすごい人気なのだ。しかも、ワインに詳しくないフランスの若者の間でもこの漫画を通じてワインファンが増えているとか。恐るべし、日本の漫画パワー。世界のワインマーケットにまで影響を与えている。














