職場を生き抜け!

2008年7月30日

【第32回】入社5年目。会社を辞めて独立を考えています。甘いですか?

〜安易な独立よりも、「社内・個人事業主」に〜

読者からの“タレコミ”

会社に入って5年目です。一通り仕事を覚えたので、思い切って独立を考えています。けれども、漠然とした不安もあります。独立はやはり難しいでしょうか。

人事ジャーナリストが返信

 独立ですか……。結論からいえば、積極的にお勧めすることはできません。かなりしっかり準備してから独立しないと、前途は明るくないからです。

 独立した後の道としては、会社やNPOを作ったり、SOHOなどのような個人事業主に
なる選択肢があります。あなたは、それらに関する雑誌を読んだことはありますか。私は、いつも不思議な思いでこれらの雑誌を読んでいます。

 そこで紹介される経営者や事業主は、ほとんどが成功している人たちです。これはなぜでしょうか。

 私は、人事・労務関連の内容を紹介する雑誌に執筆しているため、ベンチャー企業の経営者やコンサルタントのような個人事業主をよく取材します。取材では、創業の頃の苦労話をよく聞きますが、実際、かなりの苦労をしています。

 独立には「光と影」がありますが、うまくいっている「光」の部分だけを伝えていくことは、読者に誤解を与えると私は考えています。

 「陰」でいえば、創業の頃がその最たるものです。お客さんは少なく、収入は多くはありません。もちろん、会社員のように毎月、一定のお金は手にできません。

 会社員の働きについては、「成果主義」や「長い労働時間」などが問題視されていますが、いざ独立してみると、いかに会社員が守られた存在であるかを痛感します。

 例えば、社会保険労務士の林憲生さん(42歳)は大手メーカーを退職し、20代後半で独立しました。彼は、創業時をこう振り返ります。

林さん:始めの3年間は辛かったですね。人事の実務経験はないし、社会人としての経験も浅かったから、営業に行こうと思っても億劫になるんです。営業先は、主に中小・中堅企業の社長。そのほとんどが、当時の私よりもはるかに人生経験が豊富で、場数を踏んでいる方たちです。だから、なかなか営業がうまくできなくて、結局、仕事が入ってこない。3年間は収入が少なく、家族を養うことが大変でした。

 病院やクリニック向けのコンサルティング会社・フォーユーメディカルの社長である廣田祥司さん(35歳)は、20代後半で金融機関を退職して独立しました。

廣田さん:最初の1年間は、私の給料は毎月出ませんでした。出る時もあれば、全く出ない時もあり、生活は苦しかったです。前職で多少の貯蓄があったので、それで家族を養っていました。社員や会社のことを考えると、眠れない日が続きました。独立すると、とにかく先が見えない。この不安感で苦しみました。明確な目的を持っていないと、独立はうまくいかないでしょうね。

 リクルートの関連会社・リクルートコスモスで人事部長を経験した後、独立したのが、
コンサルティング会社・マングローブの社長の今野誠一さん(50歳)。

今野さん:リクルート出身ということで、幸運なことに、独立してもお会いしていただける方はたくさんいましたが、それがなかなか仕事に結び付いていかないのです。それほど、甘くはないのですね。最初の1〜2年間は、苦しかった。売上は、思い描いたようには伸びませんでしたし、赤字の状態の時もありました。

 3人は、いまでは、安定的に売り上げや利益を出すビジネスモデルを確立しています。経営する事務所や会社は発展を続け、社員数も増えています。全国の経済団体や企業から、講演などの依頼が毎月コンスタントに入るほどです。

 この3人の創業期は、まだスムーズな方です。私が取材をした中には、もっと悲惨な人がいました。

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著者プロフィール

吉田 典史(よしだ・のりふみ)
1967年生まれ。大学卒業後、通信社、放送局、出版社で、夜逃げする社長から総理大臣経験者まで、計1200人前後の取材をする。2005年独立以降は、ビジネス書、特に人事・労務分野で取材、執筆、編集を続ける。雑誌「人事マネジメント」(ビジネスパブリッシング社)、「企業と人材」(産労総合研究所)などで執筆中。著者に「すぐに使えるビジネス文書文例400」(成美堂)、「即解!2007年問題 トピック45」(九天社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文館出版)、『非正社員から正社員になる!』(光文社ペーパーバックス)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』などがある。ライターや編集者を志す人が集う「編集の学校・文章の学校」では取材、ライティングを教えている。

このコラムについて

職場を生き抜け!

「夜逃げした社長」から「総理大臣経験者」まで--。これまで計1200人を取材してきたジャーナリストが、読者から寄せられた「職場の悩み」に答えるべく、専門家、企業の人事担当者への取材を敢行する。毎回、マニュアル本では書かれなかった企業人の“本音”“ナマの声”を踏まえた現実の回答を探る。

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