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人を組み替える

2015.03.19

失敗・挫折・病気──相手を引き込む「マイナスモード」の自分プレゼン

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

コミュニケーション 意識改革 プレゼンテーション

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

相手とつながるための「キャッチフレーズ型」「プラスモード」の自分プレゼンに続き、今回は「マイナスモード」の自分プレゼンを練習してみよう。自分がかつて経験した失敗・挫折・病気などについて語る方法だ。

相手とつながるためには相手が感心のあることを話す必要があるが、失敗・挫折・病気といったことについては誰でも経験するものなので、相手の中に「像」を結びやすい。それを語るだけで共感され、感情を共有しやすい話題と言える。プラスモードの話を長々と続けていると、まるで自慢話かのように受け取られてしまうが、マイナスモードについては話し過ぎてもそれほど害は無い。むしろ共感を深めることになる。

例えば私の場合、水泳が不得意だった。小学校6年のときにはクラスの皆が25メートル泳げたのに、私だけが泳げない。先生からは「最後のチャンス」と言われ、クラスの皆が見守るなかで一人だけ泳がされることに。そこには当然、好きな子とかもいるわけだ。応援してくれているけれども、絶対に泳げない。ものすごくかっこ悪い思いをすることになった。

その後、高校生のときに押し入れの中から、私の幼稚園時代に母と先生が情報交換している日誌のようなものが見つかる。そこには、「この子は3歳のときに海で波をかぶって以来、水を怖がって困ります」なんてことが書いてある。面白いもので、なぜ水が怖いのか分かった途端に、私は泳げるようになった。もちろん得意というほどではない。ハワイに行ってハナウマベイで溺れそうになったこともある。水はいまだに怖い。

もう一つ、会社に入ってからのお話をすると、私は出世街道を歩んでいたが、30歳のときにメニエールという内耳の病気にかかった。目の前の景色がぐらぐらして、ぐるっと回転してしまう。すごく気持ち悪い症状だ。やむなく出世競争からは離脱して、私は30代で年収を固定して専門職に変わっている。

さて、皆さんならば、どんな話をされるだろうか。できればこういったことを面白おかしく語ってみてほしい。最初に語り出すところだけ、30秒ぐらいで試してみよう。

 

不思議なことに、このマイナスモードの話を相手に黙って聞いてもらうだけで、なんとなく癒やされるような気がしないだろうか。素直に自分の中のマイナスのエネルギーを外に出すと、相手のプラスのエネルギーと引き合うかのように感じる。逆に、プラスのエネルギーを出し過ぎると相手のプラスと反発し合って相手が遠ざかる、そういうこともあるだろう。

こういった話題で相手を引きつけておくことは、自分にとって非常に大事な資産となる。上司の方には、部下にマイナスモードの話をして、早めに自分の弱みを握らせることをお勧めしたい。非常に優秀なマネージャーというのは、この弱みの握らせ方が実にうまいものだ。失敗・挫折・病気の三つほど、自分の過去を振り返りながら整理してみてはいかがだろうか。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。