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時間を味方につける

2015.03.17

急に金持ちになると、なぜ失敗するのか

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

成長戦略 危機管理

アメリカのプロフットボール選手の78%が生きているうちに破産し、プロバスケットボール選手の60%は引退後5年以内に破産するという。これは急に金持ちになると単に浪費するだけではなく、豊富な資金を事業などに注ぎ込み、逆に巨額の借金に変わってしまうためだろう。

常識で考えるなら、大きなお金が入ってきても引退後のことを考えて、しっかり貯金すべきだと思う。しかし実際には、まったく逆のことをやってしまうことになる。その理由は何だろうか。これは経営者にも言えることなのだろうか。節操がない、そんな言葉だけで片付けてしまうと、人間の行動の本質を見失ってしまうことになる。

生きる速度には差がある

「生き急ぐ」という言葉があるが、その反対にじっくり今を我慢して将来に期待を持つ、そんな生き方もある。人間の行動は二つの要素でコントロールされている。目先の利益や欲望を満たすことと、長期戦で考える利益である。

衝動的な行動は良くないと考えてしまうが、実はそのほうがリスクは高くても大きな成功を収めることがある。急激に事業が成功すると、お金が入ってきて、自分の欲しいものを手に入れたり、結婚も早くする。その結果、離婚のリスクなどは上がるかもしれないが、同時に自分の子孫をより多く残せるという可能性も高まることになる。

人間は進化の過程で脳を成長させてきたが、それよりも社会の変化のほうが早く、実際には社会の変化に人間の脳が追いついていない。つまり根源的な脳の構造や働きは、それほど進歩していないと言っていいだろう。だから、どうしても目先の獲物(利益)を求めてしまうのは、仕方のないこととも言える。

若くして成功するスティーブ・ジョブズのような実業家は、自分のアイデアを素早く実行して、大きな成功を収める。目先の獲物を素早く追いかけることで成功を収める生き方もあるし(それなくして大きな成功はない)、長く生きてそこそこの成功と、それなりの老後を楽しむという生き方もある。これはどちらが賢く、どちらがダメという話ではない。速攻型の脳か、じっくり型の脳かを自分で見極め、それに合った生き方、会社経営をしていけば良いだろう。

楽観的な判断ができる

「まあ、大丈夫だろう」そんな曖昧な判断は危険だと感じてしまうが、その精度の高くない判断こそ、大きな成功につながる可能性がある。常に的確な予測ができ、リスクを察知できるような脳であればミスは少ないが、大きな成功を得ることも難しくなる。

確実に信用できる精度の高い危機管理能力を人間は持っていないので、危険だと感じたときに早めに退散するか、あるいはまだ大丈夫だと思って挑戦を続けて行くしかない。この曖昧で不確実な脳というものが、逆に大きなチャンスを得る場合もあるのだ。肯定的に考えるなら、小さなミスをすることで大きなミスを回避できるというわけだ。

若くして成功した経営者は、自信に満ちている。その自信は実際の実力や資金力に裏付けされていなくても、過剰な自信を持つこと自体が才能とも言える。その信用ならない自信が人を信用させ、資金が得られ、大きな成功につながる場合もあるのだ。

私たちが持っている脳は、精度も機能も曖昧で不完全である。だからこそ、目先の物に飛びつくこともあるし、長期的に成功する場合もある。自分の脳がどちら向きなのか、あらためて考えてみる価値はあるだろう。

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楽観的な考えが脳を救う

楽観的になると右脳が刺激されて、脳の神経細胞が増えることが分かっている。つまり脳自体が若返るということだ。さらに重要なことは、楽観的になることによってストレスを早く解消できるということだ。

プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。