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人を組み替える

2015.03.12

セルフエスティーム──若者を沈黙させる、低い自己肯定感の原因

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

アイデア 意識改革 教育

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

若い人たちから意見があまり出ないという悩みを聞くことがある。「アイデアを出してほしい」と言っても、なかなか発言してくれない。これは一般的に、若い人たちのセルフエスティーム(自己肯定感)の低さが理由として考えられる。「自分の未来は明るい」といったポジティブな感覚がなかなか持てず、自分に自信がないので意見も出しづらい。

そして自分が傷付きたくないという気持ちの強さゆえに、相手を傷付けるのも怖いという感覚が強い。本来、コミュニケーションというものは相手を傷付けるリスクを伴うものだ。しかし、そのリスクを嫌ってTVドラマやタレントをネタにした軽い会話に終始することが多い。

社内のコミュニケーションを活性化するためには、このセルフエスティームを高めてあげる必要がある。そのためには当然、なぜ低くなっているのかという原因を知っておかなければならない。

発端は日本社会の核家族化、少子化にある。それと同時に地域社会が後退した。ここで幸か不幸か、親と子の密着度が非常に増すことになる。兄弟やご近所さんとの接触が少なくなった分、親が直接的にかかわる比重が増えるというわけだ。

そして学校に行けば、団塊の世代が一学年200万人もいたのに対し、いまや100万人足らず。クラスの人数が減れば、自然と生徒たちに対する先生の目が届きやすくなる。生徒の行動を「見逃さない」という状況が強くなるのだ。

縦の関係の密着度が強まると、上から指摘されることが多くなる。親からは「早くしなさい」「ちゃんとしなさい」「いい子にしなさい」と言われ、靴を履くのに手間取るだけでも、とにかく怒られたりする。大人から見れば子どもが至らなく見えるのは当たり前なので、どうしても○より×をもらう機会が増える。

皮肉なことに、親が子に熱心であればあるほど、ちゃんと教育しようとすればするほど、そして兄弟が少なければ少ないほど、親からのダメ出しが直接たくさん届くことになるのだ。そして学校においても、熱心な先生ほど何とかしたいと思い、何とかしたいと思うがゆえにダメなところを指導することになる。

すると、家庭でも学校でも×をもらうことが増えた子どもは、自分を肯定する感覚が低くなってしまうというわけだ。これを支えるにはどうすれば良いか。実は昔から、日本では“ナナメの関係”が非常に大事だった。お兄さん、お姉さん、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんなど、「利害関係のない第三者」からサポートを受けて、知らぬ間に癒やされたり、励まされたり、勇気づけられていた。

この関係は、会社においても同じだ。縦としての上司・部下、横としての同僚だけではなく、“ナナメの関係”の先輩・後輩といった存在が重要になる。いわゆる“メンター”という役割が、会社全体のコミュニケーションレベルを豊かにできるかという問題と密接に関係しているのだ。

社員のセルフエスティームが高くなれば、意見も活発に出るようになる。この日本社会で根源的に広まってしまった、若い人たちの自己肯定感の低さについて意識しながら、社内のムードを今一度見直してみてはいかがだろうか。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。