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カネを活かす

2014.11.05

増加する「反面調査」にどう対応するか

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

節税 制度 信用

税務調査の一つの手法として、反面調査があります。これは税務調査の過程において、調査先の資料を直接調査しただけでは実態の把握が困難な場合、調査対象者の取引先などに対して実施される税務調査のことです。反面調査によって不正行為が発覚する場合も多いようですが、反面調査の対象は取引先などの関係先だけではなく、従業員やその家族、さらには退職した元従業員やその家族にまで及ぶことがあり、さらに反面調査によって取引先などとの関係が悪化するケースや、信用を著しく失うことも考えられます。

昨今では、この反面調査が増加している傾向が顕著です。一つの原因としては、昨年からスタートしている改正国税通則法で、それまで各税目に分散されていた「質問検査権」の規定が国税通則法に集約され、法人税については本体調査先のみにしか認められていなかった「帳簿書類その他の物件」の調査が、反面調査にまで拡大されるといった税務環境の変化が考えられます。

反面調査について、その影響を考えると簡単に見過ごすことはできません。ここでは、反面調査の意味を再確認するとともに、自社が反面調査を受けた際にどのように対処すれば良いのか考えていきたいと思います。

1. 反面調査はどんなときに実施されるか

反面調査は直接の調査先で仮装行為があると推測されるときや、帳簿書類に不備があるときに実態を把握するために行われる調査ですが、具体的には以下のような場合に行われるのではないかと考えられます。

(1)売り上げの計上漏れの疑いがある場合……売上先に対して確認する
(2)仕入れの過大計上の疑いがある場合……仕入れ先に対して確認する
(3)架空外注費を計上している場合……外注先に対して確認する
(4)架空人件費を計上している場合……雇用者に対して確認を行う
(5)架空経費を計上している場合……支払先に対して確認を行う

また、税務調査の過程で調査先が次のような場合でも実施されることがあります。

(1)非協力的な態度を取る(帳簿の提示を拒む、質問に答えないなど)
(2)不誠実な態度を取る(質問には答えるが、回答が曖昧で不誠実なときなど)
(3)帳簿や証憑の不備(保存していない、記帳が不正確など)

調査官に非協力的な態度で臨み、帳簿の提示を拒んだり質問に答えなかったりすると、税務調査そのものが成り立たないことが考えられます。この結果、調査官が「この会社だけでは調査は完了できない」と判断して、反面調査が実施されることになります。

上記のような反面調査は、以下の3つの調査方法で行われます。

(1)文書による照会
(2)電話連絡による照会
(3)相手先に出向く臨場確認

2. 反面調査は拒否できるか 本調査先の対処

反面調査は「取引先に迷惑がかかる」「取引先の信用を失う」というリスクがあり、調査官から反面調査の実施を要求されても、できれば避けたいものです。

しかし実際には、反面調査は国税通則法の規定による質問検査権によるものであり、また、東京高裁の判決では「反面調査は、諸般の事情にかんがみ客観的な必要性があり、かつ社会通念上相当な限度にとどまる限り、その時期・程度については、権限ある税務職員の合理的な判断に委ねられる」とされ、納税者の了解を伴わない反面調査を認めています。

従って、単純に営業上の「信用を失う」という理由のみでは、反面調査を拒否できないことになります。そして、反面調査先が調査を拒否したり、虚偽の答弁をした場合には、国税通則法の規定により1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されますので、無条件に拒否するということはできません。

しかし、国税庁の税務運営方針には、「反面調査は客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行う」と定められています。この運営方針によれば、反面調査の範囲はかなり制限されるものと考えられ、反面調査の拒否はできなくても、調査権の乱用は防止できるものと思われますので、客観的に必要性が認められない場合は、企業の私的利益の損失を理由に自粛を要求するべきだと思います。

税務運営方針 昭和51年4月1日 国税庁
ハ 調査方法等の改善
税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限度にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。

3. 反面調査にはどのように応じるべきか 反面調査先の対処

一般の税務調査であれば事前通知があり、日程を調整してから調査というのが原則的ですが、反面調査が行なわれる際には電話連絡もなく、いきなり来社することがあります。これは国税通則法の改正により、税務調査の事前通知の義務が明確化されたのですが、反面調査はこの事前通知の対象とはなっていないため、「常識の範囲内で連絡はするが、取引先と通謀の恐れがある場合は連絡しない」というような税務調査の現場の声があるようです。参考までに、税務調査事務運営指針においては、次のような規定が設けられています。

税務調査運営指針
(6)反面調査の実施
取引先等に対する反面調査の実施に当たっては、その必要性と反面調査先への事前連絡の適否を十分検討する。
(注)反面調査の実施に当たっては、反面調査である旨を取引先等に明示した上で実施することに留意する。

事前に連絡のない反面調査の場合、本調査と同様に、あくまでも調査よりも企業活動が優先されます。やむを得ない事情がある場合は、当然に延期を申し出ることができます。そして、調査官が来社して反面調査を開始するにあたっては、その対象となった取引先、取引年月日、取引内容などを具体的に確認して、その調査の必要性について説明を受け、その調査理由が公益的見地から十分に納得できることを確認してから調査に応じるべきです。

文書による照会という形での反面調査、あるいは事前連絡があったうえでの反面調査の場合、取引先などに連絡すべきかどうかは迷うところかもしれません。しかし、今後の取引などに影響が及ぶことも十分考えられますので、先方に連絡を入れたほうが賢明なのではないかと思われます。

そして、この反面調査への回答を依頼された場合、反面調査先の企業にとって最も厄介なのは、取引先から仮装・隠ぺい行為への口裏合わせなどを依頼された場合ではないでしょうか。もともと調査官は、その取引自体に客観的な不信感をもって反面調査を実施するわけですから、不正が発覚してしまう可能性は多いに高いと言えます。

不正への口裏合わせや書類の改ざん・隠蔽が発覚すれば、その反面調査先は税務署から悪い評価を受けてしまうことになりますし、虚偽の答弁をした場合は、国税通則法の規定により罰則規定があるのは前述した通りです。その点は十分に考慮して対応してください。

4. 反面調査には冷静な対応を

最近の反面調査は、調査官の調査技術の低下のためか「とりあえず反面調査でも」という安易な姿勢で実施されるケースも増えているようです。また、本調査先で非違事項の発見ができないと、「客観的な必要性」がないにもかかわらず反面調査が実施されることもあるようです。反面調査に来たからといって、その取引先が100%不正行為をしているとは限らないわけです。

課税公平の実現のため、税務行政への協力は必要であるとしても、企業の私的利益を考慮したうえで反面調査は行うべきであり、安易な反面調査には自粛を求めるとともに、調査に臨んでは納税者の冷静な対応が何よりも必要かと思われます。

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プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。