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カネを活かす

2014.10.09

節税して特産品も手に入る、「ふるさと納税」のお得な仕組み

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

制度 節税 地方

舛添要一都知事の訪韓以後、知事が「媚びていた」という抗議の声が挙がっているようですが、その抗議内容には「東京都に税金を払わず『ふるさと納税』をする」という声も聞こえるとのこと。思わぬかたちで「ふるさと納税」が話題になっているようです。

さて、そのふるさと納税ですが歴史はまだ新しく、2008年4月30日に公布された「地方税法等の一部を改正する法律」により、個人住民税の寄附金税制が大幅に拡充される形で導入されました。地方自治体に対する寄附金のうち、2千円を超える部分(所得税については2009年分まで寄附金の5千円を超える部分、個人住民税については2010年分まで寄附金の5千円を超える部分)について、個人住民税所得割のおおむね1割を上限として、所得税と合わせて全額が控除されます。

例えば2012年中に寄付をした場合は、2012年の所得税確定申告により所得控除がなされ、個人住民税は2013年度分が税額控除されます。そして寄付の受け入れや具体的な手順についてはまちまちで、各地方自治体が条例等で指定する方法による等、いくつかのケースがあるようです。

この制度を利用して、好みの自治体にふるさと納税(寄付金)をすれば、その額とほぼ同じ金額が所得税と住民税から控除され、その分、東京都と国に支払う税金を減らせるというわけです。納税者が自らの意思によって、寄付という形態で税金の支払先である自治体を選択できるという意味では画期的な制度ですが、反面、地方税の行政サービスを受ける住民が税を負担するという受益者負担の原則の観点からすると、結果的にふるさと納税を利用する人間は利用しない人間より安い納税額で居住地の住民サービスを受けられるということになり、その不公平さに対する批判もあるようです。

この制度が最も利用されたのは、東日本大震災のときのようで、そのときは利用者が70万人を超えていたようです。この制度は「納税」という名称が使われているので、自分の生まれ故郷や災害地等への支援の意味で理解されている人が多いようですが、実は各地方自治体への寄付であり、制度的には寄付金控除という税額控除なのです。

お得な特典

昨今ではマスコミでも取り上げられていて、現在では利用者も10万人を超えているとのことですが、なぜそんなに利用者が多いのかといえば、各自治体が競って特典を提供しているからで、この特典を上手に利用すると、かなり節税をすることができるわけです。

実際、かなりの方がふるさと納税を利用されているようで、東日本大震災の被災地である石巻市が9月1日にふるさと納税を再開したところ、12時間で106件、計160万5千円が寄せられたとのこと。昨年度は1年間で2,552万円の寄付があったそうですから、わずか半日で昨年の実績の23日分を集めた計算になります。

その理由は、5千円以上の寄付で地元の海産物や石巻焼きそば等、10万円以上の寄付者には牛肉等が提供されるといった特典が充実していること。加えて、県内で初めてインターネットとクレジット決済を導入したため、非常に手軽に手続きができるようになったことも理由の一つでしょう。

他にも、長野県阿南町では1万円あたりのふるさと納税に対する特典として、米20kgが用意されていました。1月から募集を開始したものの応募者が殺到したようで、「受付け終了」の旨がホームページ上で発表されています。

節税という面から考えてみると、1万円を阿南町にふるさと納税するとお米が20キロ送られてきて、翌年に所得税の確定申告をすると寄付金がほぼ還付されてくることになるわけです。しかも自治体によっては、クレジットカードを用意してインターネットの画面を見ながら指示通りに入力すれば、いとも簡単にできてしまう。こんな節税商品はなかなか見当たるものではありません。

ほぼ全額控除

ふるさと納税の控除の概要は次のとおりです。

都道府県・市区町村に対する寄附金(ふるさと納税)のうち2千円を超える部分については、一定の上限まで(所得税は総所得金額等の40%を限度、住民税は総所得金額等の30%を限度とします)、原則として次のとおり所得税・個人住民税から全額控除されます。

(1)所得税…(寄附金-2千円)を所得控除(所得控除額×所得税率(0~40.84%)が軽減)
(2)個人住民税(基本分)…(寄附金-2千円)×10%を税額控除
(3)個人住民税(特例分)…(寄附金-2千円)×(100%-10%(基本分)-所得税率(0~40.84%))
→(1)、(2)により控除できなかった寄附金額を、(3)により全額控除(所得割額の1割を限度)
※所得税率については復興特別所得税を加算した率で表示しています。なお平成27年分から最高税率が45.945%になります。

上記の算式で、夫婦と子供2人のモデルケースを想定して、具体的な控除額を計算してみたいと思います。

【具体例A】給与収入700万円
所得税の限界税率10.21%/個人住民税所得割額293,500円(仮定)/寄附金30,000円
(1)所得税      (30,000円-2,000円)×10.21%=2,858円
(2)住民税(基本分) (30,000円-2,000円)×10%=2,800円
(3)住民税(特例分) (30,000円-2,000円)×(100%-10%-10.21%)=22,342円(上限29,350円)
還付額 28,000円

【具体例B】給与収入5,000万円
所得税の限界税率40.84%/個人住民税所得割額4,380,000円(仮定)/寄附金800,000円
(1)所得税      (800,000円-2,000円)×40.84%=325,903円
(2)住民税(基本分) (800,000円-2,000円)×10%=79,800円
(3)住民税(特例分) (800,000円-2,000円)×(100%-10%-40.84%)=392,297円(上限438,000)
還付額 798,000円

上記で計算されたように、ふるさと納税をした金額は2千円を引いた全額が、所得税は確定申告により還付され、住民税は翌年の納税額から控除されます。ただし、具体例AとBでは住民税に対する控除できる寄付金額の割合が大きく異なります。Aの場合はおおむね1割ですが、Bの場合は2割ほどに増えています。寄付者本人の寄付金の限度額は、その給与収入と寄付者の家族構成のパターン別に異なっており、総務省のホームページにその目安が掲載されておりますので、参考にしていただきたいと思います。

このように、高額所得者に対して有利になっているのは制度的に問題があるような気がしますが、住民税の納税者としては等しくメリットを享受できるわけで、利用する価値は十分にあると思われます。特典を用意している地方自治体は全国に多数あるわけで、インターネットで見ると野菜、食品の特産物、温泉の利用券等、様々な形態の特典が用意されています。自分の好みや必要性のあるものを選択し、大いに節税に利用していただきたいと思います。

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プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。