• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

カネを活かす

2014.09.05

起業ブームで知っておくべき、税制・保険上の長所短所(前編)

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

節税 起業 制度

個人事業として行うか、法人を設立して行うか

アベノミクスの景気刺激策の影響もあり、昨今は起業ブームといわれています。起業を後押しするような政策が、独立行政法人であるNEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)から「ベンチャー企業促進のためのプログラム」として開始されたことが発表されています。

その概要は以下のように説明されています。

「公募により採択される個人やグループの起業家候補に対し、最大2年間、ビジネスプラン作成の助言や人件費・活動費などの総合的な支援を行います。起業家精神の旺盛なベンチャー企業がビジネスに専念できる環境を整え、10年後の日本経済をリードする“メガベンチャー”を育てます」

「一人あたり650万円/年を上限とした人件費、一チームあたり1,500万円/年を上限とした活動費(試作品製作、市場調査等)を最大2年間支援します。また、新事業の買い手・投資元となる大企業・金融機関・ベンチャーキャピタル等に対してビジネスプランのプレゼンテーションを行い、マッチングを図るための発表会(デモ・デイ)の機会も提供します」

サラリーマンを辞めて起業しようとする人には朗報でありますが、対象となる事業に研究開発等の制約があるため、この制度を利用するには少しハードルが高いかもしれません。確かに、モノづくりに関してはかなりの研究期間や投資が必要となるため後押しも重要ですが、一方で、流行のIT企業であればパソコンと人脈で意外と手軽に起業できるかもしれません。

サラリーマンを辞めて事業を始めるときに考えなければならないのは、個人事業として行うか、法人を設立して行うか、事業形態をどのようにするかということです。国民生活金融公庫総合研究所の「2007年度新規開業実態調査」によると、開業時の組織形態は「法人企業」が33.9%、「個人企業」が66.1%となっています。

会社法の改正により法人企業の設立が容易になってからも、割合としては個人企業が多いようです。事業形態が組織的に大規模になる場合や、法人でなければ取引ができないというような制約がある場合を除き、最初は費用がかからない個人形態で行うのが無難であると思われますが、税制・社会保険等の制度面からみて、それぞれの場合のメリット、デメリットはどのように考えられるでしょうか。

個人企業のメリット、デメリット

個人形態の場合は所得税が課税されるため、通常3月15日までに確定申告をすることになります。所得税は10種類の所得に区分されますが、事業から生ずる所得は事業所得になり、収入から必要経費を差し引いた課税所得に税率を乗じて税額を計算することになります。

そして、必要経費の範囲は事業を遂行するために必要な取引ということになり、例えば、自宅の一部を事務所として使用している場合、仕事に使うために自動車を購入したような場合等、事業に関連があるということで経費になります。また、仕事に使うためのスーツやカバン、事業関係者との飲食費なども経費となります。

サラリーマンの場合は、給与収入から給与所得控除が差し引かれ、課税所得に対して年末調整により税額が確定されることになります。この給与所得控除という概念には必要経費分が考慮されており、ちなみに年間給与が500万円の場合ですと、154万円の給与所得控除が所得から差し引かれる計算になります。

事業者が領収書をもらって必要経費で落としているところを想像すると、クロヨンと言われるように、かなり税制面で優遇されているように思われますが、実際は給与所得者でも給与所得控除を受けることによって、かなり税負担は軽減されていることになります。

もしも必要経費の合計額が給与所得控除額に満たなければ、サラリーマンの方が得になることも考えられます。したがって、すべての取引を事業に関連付けていくように、上手に経費化することが肝要です。その点では知恵を働かせる必要があります。

また、個人で事業を行う場合、通常は青色申告を選択した方が有利になります。青色申告は記帳が義務付けられていますが、所得を計算するには、当然ながら収入と必要経費を規則づけて記帳する必要があります。その場合、複式簿記の原則によって記帳を行えば、10万円の青色申告控除に代えて、65万円の青色申告特別控除を受けることができるというメリットがあるので、この特例は利用すべきでしょう。

さらに所得税法においては、生計を一にする親族に対しては給料を支払うことができませんが、青色専従者の選択届を提出することによって、親族への給料の支払いも可能になります。所得税は累進税率を採用していますから、所得額が上がることによって所得税額も逓増していきます。生計を一にする家族のなかで所得を分散すれば、世帯全体の税率を下げることが可能で、その場合の合計税額は減ることになります。もちろん、その親族が事業に従事していることが前提です。

消費税に関するメリット

加えて消費税に関しては、サラリーマンが勤務先に請求するということはできませんが、事業者は請求金額に消費税分を加えることによって、仕入にかかった消費税分を転嫁することができます。また現在、免税の制度がありますので、年間売上が1,000万円以下の場合、消費税を支払う義務はありません。また、課税売上が1,000万円を超えたとしても、開業後2年間は消費税の支払いを免除されます。

(次回に続きます)

プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。