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モノと道具を再構築する

2014.08.07

現場担当を飛ばして直接経営者へ営業するのはマナー違反なのか?

伊嶋 謙二

ITACHIBA会議レポート

生産性 人材 競争 効率 制度 IT 危機管理

経営者は黙って認めてくれればいい?

IT担当者がありながら、そこを飛ばしていきなり経営者にITシステムを提案するのはマナー違反か否か?という話題が先日のITACHIBA会議で持ちあがった。

ここでは「今どきの経営者でITも分からない経営者はどうなの?」という意見と、「情報システム担当がありながら経営者に直接提案するのは、担当者を説得できないための逃げだ。しかもマナー違反である」という意見の二つに分かれた。これについて考えてみたい。

決裁権者である経営者に直接提案することは、営業的には最も近道である。ましてや中小規模の会社であれば、経営者へ提案する機会は大企業よりも頻繁にあるということで、経営者へのトップ営業は有効だとする意見もうなずける。

次に、直接経営者に提案するのはマナー違反だとする意見について考えたい。ある情報システム担当者は「経営者に直接アプローチするというのは担当者にとって非常に失礼だ。提案された内容をもとに、経営者に社内営業しろ、説得しろというのは筋違いだ。情報システム担当者を口説いて、さらにその上長を口説いて、その上で最終的に経営者のところにくるのがベンダーや販売店の提案の王道だ」という主張が響いた。

つまり、日本企業の多くは、情報システムについては内製化するというより、外部の開発企業に任せることが多いことから、情報システム担当と外部の販売店やSI企業などとの関係性が深いという事情がある。

つまり「ツーカー」の関係性の提案者と情報システム担当の蜜月関係を壊すことになるので、このトップ営業は情報システム担当者にとっては否となる。

また情報システム担当者は、「良く分かりもしないITについて経営者からしたり顔で意見されても迷惑だ」と本音では思っている。

社長は黙って認めてくれれば、あとは情報システム担当が最適なシステム構築を行い、運用を行うことができるというシナリオを崩したくない気持ちも理解できる。

ITを経営の中枢に置いた経営判断を

トップ営業は是か非かは即座には決めかねるが、少なくともITの分かる経営者が多くなっていることと、ITが専門職でなくても身近になってきているという両面があることで、ITの専門性が薄れてきていることは確実だ。

一方、否定的な情報システム担当者の考え方として「経営者はITが分かっていない方がやりやすい。ベンダー側が経営者に直接提案に行くのは、IT担当者にとってまずい状況が生まれる場合がある。極端なケースでは、情報システムは減らしてもいいやとか、情報システム担当は必要ないというような判断を迫ることも考えられる」という意見もあった。

ITを取り巻く環境はWebやクラウドネイティブな世界に生まれ育った世代に変わりつつある中で、否が応でも、確実にITを前提とした経営を踏まえた経営判断をしなくてはならなくなっている。

もはや経営者自らが理解できるかできないかは置いておくとして、ITを経営の中枢に置いた経営判断をせざるを得ないのが現状だ。

理解できなければ経営判断をサポートするITの推進者や仕組みを身近に置くだけでも良い。「コンピュータしかできないことがあるはず、巨大な計算機として、ビッグデータをどう活用するかがこれから大事になってくると思う」という意見も言われていた。

一方、経営判断や事業を継続していくということは「小さなことをコツコツと変えていくことを続けることで気がついたら大きく変わっているということ」なので、この小さなことをこつこつと進めていくためにITをツールとしてうまく使うことは何より、すでに導入しているIT=コンピュータをうまく使いこなすという、経済合理性に合った道理である。

「今はすべてがネットワークでつながっている世界だ。その前提で小さなことからどう改善していくかを考えることが我々の時代にやるべきことだ。時代が少子化に向かっていて、消費は間違いなく減ってきている。その中で、お互い連携して無駄なことはなくし、有効な資源をうまく使ってビジネスを展開することが前提」というのがまさに正論だ。

つまり、経営に役立つITを導入することが最終目的であって、トップ営業が是か否かについては論ずるまでもないという結論に落ち着く。

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。