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カネを活かす

2014.07.22

消費税率アップへの対抗策としての事業の活用―事業と給与の境界線―

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

危機管理 節税 制度 信用 成長戦略 消費税 競争

給与と事業とでは税務上の扱いが大きく異なる

4月1日から消費税率が8%にアップされました。事業者においては、売上金額に消費税を請求することによって転嫁できるわけですが、消費者である一般のサラリーマンにおいては勤務先に消費税を請求することはできません。

この税率アップに対しての防衛活動は節約という形で消費活動に反映されるのが一般的ですが、サラリーマンを辞めて事業者になるということで、消費税を請求できる立場になるというのもひとつの対抗策かもしれません。

また、逆の立場で給与支払者からすれば給与という形態での支払いは課税仕入になりませんが、事業者への支払ということになれば、その分課税仕入が増加し、消費税が減額されるというメリットが生じます。

一般に事業とは、商品を販売したり、商品を仕入れたり、消耗品を購入したり、一定の役務の提供を受けたり、さまざまな経済活動を通して行われます。

特に経済活動が複雑になるにつれて、役務の提供を受ける場合その就業形態が多様化してきており、従来の給与所得者、事業所得者の概念に当てはまらないケースが増加しています。

そして、その行為が給与に該当するのか、事業に該当するのかによって税務上の取扱いは大きく異なってくるため、その判断にあたっては諸法規に照らし合わせ慎重な判断が求められます。

給与所得になるのか、事業所得になるのかで税務の取扱いが異なるのは次の3点です。
(1)所得の計算方法
・事業所得は収入から必要な経費を差し引いた額が所得です。
・給与なら給与所得控除額を差し引いた額が所得となり、年末調整で税額が確定されます。
(2)消費税の課税区分
・事業所得は課税対象の取引になり、支払者は課税仕入となります。
・給与所得は課税対象とはならず消費税には影響しません。
(3)源泉所得税の額
・事業所得の場合は法律に規定された一定の「報酬」について源泉徴収が必要になります。税率は10.21%が一般的です。源泉徴収の必要がない場合もあります。
・給与所得の場合は「給与所得の源泉徴収税額表」によります。

実務的な面からみると、支払者側としては計算や手続が面倒であることから、源泉徴収をしたがりません。また、受け取る側も手取額が減るので源泉徴収されることを嫌います。このような安易な理由から給与所得を事業所得として処理することがあります。

しかし、役務提供の対価の支払者においては、給与とすべきものを外注扱いにするというような判断を誤ると、上記のように、源泉所得税が発生するとともに、課税仕入にも該当しなくなるため、消費税が増える結果になります。

そして、支払いを受けた人が申告しないこともあるので、税務署は課税逃れを防ぐために、給与所得として扱い源泉徴収をするよう促すのが一般的な傾向です。

税務調査で揉め事が起きやすい分野

このように、その区分によって大きく税額が変動するため、税務調査の場面でその線引きを巡って税務当局と揉める可能性が極めて高い分野といえます。この給与等該当性に関する判断基準をいったいどのように考えれば、無事税務調査を乗り越えることができるのでしょうか。

一般的に事業所得と給与所得とを区分する判断基準として、以下のような概念が挙げられています。

(1)事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得です。
そして、次のような要件を満たしているものが事業とされています。
・自己責任で行われている
(出来高制など報酬が成果で定められている、必要な費用は自分で負担している)
・営利性がある
・反復継続している
(2)給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得です。
具体的には下記の要件を満たしている場合には給与所得とされています。
・雇用契約が存在する(これは必ずしも書面に限りません)
・使用者の指揮命令に服する
・使用者から空間的および時間的な拘束を受ける
・職務上の費用が使用者の負担となる

また、所得税法基本通達では「事業」と「給与」の判断基準を以下のように定めています。

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く)を受けるか。
(3)作業の具体的な内容や方法について、報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く)を受けるか。
(4)まだ引渡しが完了していない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるか。
(5)材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているか。

以上のような判断基準があるわけですが、具体的な就業形態は多岐にわたっており、簡単に判断できないケースも多数あるものと思われます。

判断に迷う場合は以下のような基準をもとに総合的に判断をしていただきたいと思います。
・指揮監督 業務について完全な指揮監督を受けるか否か。外注者は自己の責任と判断で業務遂行します。
・他人との代替 通常、外注であれば、他人との代替が容易であるはずです。
・日当計算 外注は本来、出来高払いのはずです(ただし職種によっては例外があります)
・賞与支給の有無 外注者に対する賞与支給はあり得ません。
・道具等の負担 雇用の場合は会社負担なので自己で所有しません。
        請負の場合は、通常は自己負担です。
・請求書の有無 請負の場合は、請求書を発行する場合が多いと思います。
・福利厚生面 社宅の提供、通勤手当支給、残業食事負担がある場合は雇用契約です。

以上のような観点から、現状の就業形態が事業なのか給与なのかを再検討することが税務調査を乗り切る最善の方法であると思われます。

もしも、上記の基準に照らして曖昧な部分があれば、基準に合うように就業形態を修正していくことも必要かと思われます。そして、契約書、請求書、領収書などの証拠書類の整備、整理は抜かりなく行うことは必要条件です。

プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。