• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

モノと道具を再構築する

2014.07.03

ITがあれば何とかなるという幻想

伊嶋 謙二

ITは企業の役に立っているか

効率 生産性 IT 成長戦略 意識改革 クラウド 競争

幻想を捨てて、目の前の課題を見つめよう

中堅中小企業のIT化は、実態や歴史的背景から見ても、「コスト削減」「社内情報共有」が中心となっていることは否めない。しかし中堅中小企業にとってITの本来の目的は何であるのか?企業の目的がコアビジネスを拡大させることにあるのは自明の理である。

「ITが企業を救う万能機」という、ある種の都市伝説的な思い込みがあったかもしれない。実際にはITにできることは限定的で、仕事ができないあるいは競争力が大したことのない製品やサービスなのに、ITがあれば何とかなるというのは幻想に過ぎない。

筆者が7年ほど前に、経営とITについて書いたものがある。内容は今の状況にも変わらずに当てはまると思うので、若干の補正を加えて以下に記すことにする。

今後のIT経営実現に向けて絶対に見落としてはいけないポイントは次の3つだ。

第1点は、「経営者自身がITを積極的に理解する(しようとする)こと」だ。技術的な理解ではなく、経営に応用できる段階かどうかを判断することである。社内にIT人材が少ない場合は、ITに詳しい外部専門家に頼れ。

第2点は、「投資という観点からITを位置づけること」だ。経費的にITを見れば業務効率型の域を超えられない。コアビジネスの事業拡大のために中長期的な視点に立って、投資的な観点で見直す。

第3点は、「限られた投資予算の中で最大限の効果を求めること」である。社内で十分に備わっているITリソースの棚卸を行い、本当に必要なITが何かを把握する。その上で余剰があれば破棄し、不足があれば社内システムを増強したり、クラウドなど社外のリソースを利用するなど創意工夫を凝らして最大効果を追求することが重要だ。

ITで経営がうまくいくことは限定的。本業がしっかりしていることがキモ

中小企業の経営者と会話をすればすぐに分かることだが、多くの経営者の関心は月次の売上であり、キャッシュフローである。毎月安定した売上と入金が見込めることで、様々な経費の出金に対応して日々の経営を遂行している。

ほとんどの企業にとって主たる事業が備わっており、その事業から得られる最大限の売上を確保すること、そして極力コストを掛けないで利益を得ることに、経営者は腐心する。

一般的なITやクラウドシステムで経営が極端にうまくいくケースというのは、例えば効率化できる部分などや生産を高められるツールとして見落としていた業務フォローをITでうまくサポートできたために、効果が生まれたというような場合だ。このことは十分に有り得る。

ただしそれは、どの企業にとっても等しく生まれるメリットであって、その企業独自の強さや特徴ではないだろう。つまり、IT経営でうまくいったということではなく、単にうまく回っていた事業にITが更に好作用を引き出したという程度だ。

極論を言えば、ITで経営がうまくいくことはない。まずは主たる事業がしっかり存在し、その上でどれだけITをうまく活用することができるかを考えることが、最も間違いのないIT活用の基本となりそうだ。

もしかすると、ほとんどIT無しでも企業が継続、成長することも可能なのではないだろうか。すべては企業の本質に委ねられている。

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。