• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

カネを活かす

2014.06.20

法人税率減税の効果、そして代替財源は(2)

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

制度 危機管理 成長戦略 法人税 競争 節税 景気

税負担により研究開発費に差が出れば海外企業に負ける

前回の続きです。1980年代前半まで、日本は必ずしも国際的に見て法人税率が高いとはいえませんでした。その後、資本移動の自由化が進んで、各国が法人税率の引き下げを競う、「税の競争」を行うようになり、法人税率を下げれば国外から資本が入ってきます。

アイルランドのような経済規模の小さな国ではそのメリットが大きく、アジアでは香港やシンガポールも同様です。

日本は国際的に見て、国外からの資本の移動がもっとも少ない部類の国に該当します。法人税率を下げることによって各国からの資本の移動が増え、雇用の増加、経済成長につながることが予想されますが、外国企業による買収といった「いつでも撤退できる投資」だけが増えるという状況も危惧されるところです。

設備投資等の実態の伴った投資を増やすような政策も併せて望まれるところです。また、法人税率の引き下げは日本企業の競争力を高めることになります。

経団連副会長佐々木則夫氏は「日本企業は国内だけではなく海外でも激しい競争をしている。もし韓国のサムソンがそのまま日本に本店を移せば、あと1兆円分の税金を払うぐらい税負担には開きがある。余裕分が設備投資や研究開発に回って何年も差がつけば、ライバルに追いつけない。」と税率引き下げを強く主張されるとともに、その効果は企業の業績の向上につながり、利益は最後に賃金の上昇になって返ってくると述べています。

景気が回復基調に移行している状況の中、成長戦略の柱として更なる成長につながることを望みたいところです。

税率引き下げの議論は進んでいますが、代替財源についてはあまり議論は進んでいないようです。

4つの代替財源

では、法人税率引き下げのための財源確保としてどのようなものが考えられるでしょうか。法人税以外の税目に財源を見出すという見解もあるでしょうが、法人税の中で課税ベースを拡大することによって代替財源を出すという方向性が検討されていますので、可能性のあるものをいくつか列挙してみたいと思います。

(1)欠損金の繰越控除での控除割合縮小と繰越期間延長(現在:繰越期間9年、控除割合は大企業のみ80%)
(2)受取配当の益金不算入割合の引き下げ(現在:持株割合25%以上の株式に係る配当は100%、持株割合25%未満の配当は50%が益金不算入)
(3)租税特別措置の大幅見直し(現在:研究開発減税、中小企業の軽減税率引き下げ等)
(4)減価償却方法を定率法から定額法へ変更(現在、機械装置について定率法と定額法の選択)

上記に挙げた他、赤字企業などにも(資本金に応じて)課税する外形標準課税を導入する案も出ていますが、消費税を転嫁できていない中小企業も多く、取りやすいところから取る形で課税を強化すると、赤字企業は持ちこたえられずに倒産に追い込まれてしまうことも予想されるところです。

最初に「税率引き下げありき」で議論を先行させないで、代替財源の議論も様々な角度から検討し、景気の腰折れとならないように慎重な議論が必要だと思われます。

Image (c) vladi_mir - Fotolia.com

プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。