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カネを活かす

2014.06.19

法人税率減税の効果、そして代替財源は(1)

樋口 秀夫

事業主さんのための攻めの節税

競争 制度 景気 危機管理 法人税 成長戦略 節税

代替財源はどこにある?

安倍首相は、成長戦略の柱として法人税の実効税率の引き下げの方針を掲げています。更に政府と与党は、2015年度から、数年間で20%台まで引き下げる方針で一致したと報道されており、税率引き下げに向け、着々と歩を進めているようです。

一方、麻生太郎財務相は6日の閣議後記者会見で、財界が求めている実効税率5%程度の引き下げについて、税収の上ぶれ分を充てるとの見解には同調せず、恒久的な代替財源が必要との認識を改めて強調します。

現在35%程度の法人実効税率は1%の引き下げで約4700億円の税収減になるとされており、麻生氏は会見で、政府が掲げる平成32年度の基礎的財政収支の黒字化目標達成には12兆円の税収が不足しており、仮に税率を5%下げれば2兆円超の税収減になるとし、「当然、代替財源がいる」と指摘しました。

単なる実効税率の引き下げということではなく、代替財源を模索しながらの減税ということになると、課税ベースの拡大ということが考えられます。

課税ベースを拡大するためには、投資減税を圧縮する、あるいは減価償却を厳しくすることなどが考えられますが、その結果、差し引きで法人税収を維持することが可能となるかもしれません。

別の角度からは、EUのように法人税率を引き下げたことで、個人事業主が法人に移行する「法人成り」がかなり増え、その結果、法人税収は増えたが、所得税収はそれに応じて下がるというような結果になっており、法人税収だけを見るのではなく、所得税収との合計を総合的に見る必要もあります。

日本だけが取り残される

また日本においては、法人税には国税分と地方税分があり、実は、国税の方は海外と比較してもそれほど高いわけではありません。

むしろ、地方法人2税といわれる法人住民税と法人事業税が高いわけで、法人税率の引き下げの問題は、地方法人税をどうするかが議論されなければなりません。この議論は地方からのかなりの抵抗が予想されるところです。

また、消費者からは、4月に消費税率がアップして増税分の負担に節約を懸命にしている最中に法人税率の引き下げをするというのは、大企業を含む法人をあまりにも優遇しているのではないかというような、対立的な議論も生まれています。

しかし企業は雇用の場であり、所得を生み出す場であり、そしてイノベーションの担い手であるということを考慮すれば、法人税率の引き下げで企業活動が活性化すれば、その恩恵は国民全体に広がる可能性があるわけです。

法人税率の引き下げの恩恵は企業だけ、あるいは利益を上げている一部の大企業だけに及ぶものという見方は少し一面的であるような気がします。では、なぜ法人税率を引き下げなければならないのでしょうか。

欧州やアジア諸国が「税の競争」という形で積極的に法人税率を引き下げている中で、日本は米国と並んで世界で最も法人税の高い国になってしまっています。

その米国でも法人税を引き下げるという議論が行われているわけで、米国が法人税率の引き下げに動くようだと、日本だけが高い法人税の国として残されることになるわけです。

ちなみに、各国の実効税率はイギリスが23%、韓国(ソウル)が24.2%、中国は25%、ドイツは29.59%、フランスは33.33%、アメリカ(カリフォルニア州)40.75%、そして日本は東京都で35.64%となり、アメリカを別にすればかなり高い方に位置します。

次回に続きます)

Image (c) vita_design - Fotolia.com

プロフィール

樋口 秀夫 (ひぐち ひでお)

IAU税理士法人・樋口事務所所長。1952年東京都生まれ、立教大学経済学部経済学科卒。1982年税理士試験合格、1985年6月税理士事務所開業。税理士は税務における納税者の弁護人であるという理念に基づいた業務内容に特徴があり、多種多様な業種のクライアント多数。