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コモディティ化されゆくハードウエア

人を組み替える

2014.06.10

「勝てばなんでもあり」を良しとするか

伊嶋 謙二

ITはどのような社会をつくったか

意識改革 危機管理 IT 失敗 リーダー 成長戦略

風評という弱みに付け込むことそしてマッチポンプ的に相乗りすることのカッコ悪さ

勝てばなんでもありを良しとするかどうかは、それぞれ行う人や組織の価値観によるとは思うが、いわく、日本的な潜在的な美意識や農耕民族的な感性からいえば、馴染まないかあるいはたしなめられる行為とみなされることが多かったような気がする。

しかしいつの間にか欧米的な、または大陸的な狩猟的感性が強まっているせいなのか、勝つことが最上であり、方法は問わないことが優先されるようだ。

弱みを見せた相手に対して、ここを先途とばかりに攻め入ることが何のためらいもなく行われることが目立つ。それが違和感なく受け入れられるようになっていることにも驚く。

例えば最近だとIBMに対する一連の動きがその端的な現象だ。誤解が無いように申し上げると、この原稿は特にIBMを擁護するという立場で書いたわけではないことを伝えておく。

IBMはかつて同社の象徴とも言われたパソコン事業を売却した。当時は大きな話題を呼んだが、売却先が中国ベンダーのレノボ社であったことも注目すべきポイントだった。2014年1月、今年の早々に、今度はPCサーバー事業の売却を発表しており、結果的には同じくレノボ社に売却することになっている。
パソコンとPCサーバーは個人と組織・企業で利用するという違いはあっても、ハードウェアそのものとしては他のベンダー製品とも今や大きな差別化がなく、いわゆるコモディティ化されており、一般的には価格勝負ということで、ハードウェア事業としては大きな収益を生みだすことが難しい現状となっている。

おりしもIBMはハードからソフト・サービスへの事業転換を図っており、顧客に対する経営課題を解決するための提案を行うことを目的としている同社としては、ハードかサービスかという方法に拘泥する優先度は低いはずだ。

自分(自社)さえ良ければ何でもする、今さえ良ければ時代になりつつある

仕事上の大義名分を盾に、個人の信条とは別に徹底的にライバル関係にある企業や個人を攻め立てることは仕事上のことなので許されることとして容認されることなのか。

今回のIBMの判断を良いか悪いかを分析するのはまた別の機会に譲るとして、「現実的には大きな問題になってはいないがこれから先のことが心配である」というような不安を煽るようなIBMに対する風評キャンペーンが現在も続いている。

この動きに乗じているのが、競合ベンダーであったりメディアであったり、能書きをたれるアナリストや自称情報通の人々だ。筆者も残念ながらその一人である。

しかし取材を通じての正直な感触で言えば、目先の勝った負けたを競う前に、中期的なスコープでの、ベンダー各社が関わる市場のパイを広げることを行うべき、ということは本音では一致しているように思える。

つまり枯れつつある市場を維持拡大することが大事なことは分かっている。IT関係者は少なくとも次の5年先の自社の市場としての狩り場を確保できる有効な施策を優先すべきだ、ということについては同意する関係者は多い。

そこまで分かっていながら、風評的な尻馬に乗っているハイエナのような我々のような職業の人々が実に多い。

自らの仕事に対する誇りはどこにあるのかと考えさせられる。世の中全体が刹那的で単眼的な志向で、しかも自己の利益の大義名分を最優先する身勝手な風潮が蔓延している感じだ。

社会的あるいは環境的な問題に対する風評を取り巻く現象には考えさせられることが多い。大人としてではなく、未成熟な世界になりつつある不安も背景にはあるのかもしれない。

同じく身近なIBMの事例から多くを考えさせられる。明日は我が身であるという想像力を働かせなくてはいけない。

Image (c) Stefan Andronache - Fotolia.com

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。