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モノと道具を再構築する

2014.05.26

「課題解決を解決するIT」が日本で当たり前になるためには

伊嶋 謙二

ITは企業の役に立っているか

競争 効率 技術革新 生産性 成長戦略 意識改革 差別化 IT

経営課題の解決とIT導入目的がどうして違うのか?

良いか悪いかは別として、日本の中堅・中小企業へのITの歴史はオフコン文化で形成されてきた。そこには販売店と企業のIT担当者(総務あるいは経理担当)との密接な蜜月関係で成り立っていた。

伝票処理を中心とした企業独自の売掛、請求処理などの事務処理を個別の企業システムとして作り込んで、あなた好みの仕様でのターンキーシステム(ボタンを押すだけでシステムを運用できる)として、「だれでも扱えるコンピュータ」として君臨してきた、非常に高価なオフコンのシステムで育ってきたのが日本の中堅・中小企業のシステムであり、ITの販売チャネルでもあった。

そこをみて米国と日本を比較し、だから日本がだめである、というような論評を下す人々がいるが、少し考えて欲しい。そもそも前提として米国はすべてにおいて日本の「良い規範」と見なせるか、ということを考えるべきだろう。

米国では、販売店(=SI企業)がユーザー企業へサポートするという形態が成り立っていない。ユーザー企業自身が開発を行うためのイニシアティブを持っている。だからそこを外部に頼っている日本が遅れている、良くない、とする人が多い。

果たしてそれは全否定されるべきなのか、残念なIT環境としての日本の中小企業事情と断じて良いかどうか。そこまでステレオタイプな判断は早計と言わざるを得ない。

上記のように企業と販売店のエコシステムがもたらした日本のIT市場は、本業に専念する企業経営と情報システムを外部の専門業者に委託するというすみ分けの体質を生んだ。これが日本独自のユーザーサポートを中心とするIT市場を形成した背景にある。

しかし、それが大きな課題も包含していることは事実だ。それは中小企業自身がITを活用するバリエーションを自ら創作して展開することが難しいということだ。

外部に頼らざるを得ないことが前提になるということが、経過的には日本の中小企業のIT活用において遅れを取っていることの背景にあることは間違いない。

ここで最も大きな問題は「企業の経営課題を解決するためのIT」という観点が、実は優先度が高くないということだ。

丁寧にいえば、その多くがオフコン的な経費削減的な利用目的で進めて行った歴史があるため、そもそもの経営戦略に役立つIT活用が理解できないし、もちろん経営者も経験がないために現実的には経営戦略に役立つITをイメージできていない可能性が高いということだ。

一方、頼りになるはずの販売店も実績が乏しいために上手な提案ができない。ユーザーの業種、業務さらには実際の課題も理解しきれていないために、提案ができない。 

このどちらも進みきれない「経営に役立つIT」を普及させるには、ある種のきっかけが必要となってくる。考えられるタイミングには2つあって、一つは社会の仕組みが大きく変わること。もう一つがビジネスルールを変えることだ。

「信頼のある企業であること」、それをITでどう実現する?

前々回前回と同じく「中小企業のIT活用に関する実態調査」からであるが、この調査では、企業の「経営課題」と「ITの導入目的」についても聞いている。中小企業の最も重要な経営課題は「信頼のある会社」「競争力のある製品・サービス」「新規顧客の拡大」「新規顧客獲得・販路拡大」が上位4つだ。

その一方で、その課題に対するIT化率は大きく下回っている。目の前の経営課題と実際のITの利用状況との間に、大きなかい離が存在しているのである。この結果から見ると、重要な経営課題はコアビジネスの事業拡大など「攻め」の意識が強いのに対して、現状のITは業務効率化や社内情報共有などいわゆる「守り」の目的が強い。

つまり「重要な経営課題を解決するためにITをうまく使う」という経営戦略が見えてこないことだ。信頼のおける企業であることが、守りを固めるということで落ち着く結論に見えなくもないが。

そもそも前述した「オフコン」は日本固有のものであることから、歴史的に見てもITの導入目的に業務効率化を中心に据えてきたことは間違いない。

また、ある日米のIT投資を比較した調査では「基幹系のソリューションや運用へのIT投資が多い日本に比べ、米国は圧倒的に戦略的IT投資配分が高い」という結果もあり、この傾向は中堅中小に限ったことではなく、日本企業全体のIT事情であると言っても言い過ぎではないだろう。

これからの日本の企業はITをもっと生かした活用を、などと言うとまだそんなレベルなのか?と言われそうである。しかし今でも十分に役立っていると思われるITだが、実は更に企業を助ける頼りになるツールとしての出番を待っているという段階だ。さて中小企業はどうすればいいかを次回からさらに踏み込んで考えよう。

Image (c) kelly marken - Fotolia.com

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。