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モノと道具を再構築する

2014.05.12

企業にとって役立つITとはそもそも何か?

伊嶋 謙二

ITは企業の役に立っているか

IT 競争 意識改革 差別化 技術革新 生産性 効率 成長戦略

ITに求められることの変化

「OA(=オフィスオートメーション)」という言葉が輝いてみえる時代があった。懐かしいやら、ほとんど死語だが、それが「IT(=インフォメーションテクノロジー)」へと変化し、内容も「経費削減から、企業、組織、人間の生産活動に役立つ」というような拡大解釈をされるようになっている。

そんなIT時代になり、インターネット、クラウドの導入という大きなパラダイムシフトが起こったことで、今日、利用方法は大幅に進歩したと実感できる。

日常の生活や企業活動で、ITとオフィスワークは不即不離の関係として格段の進展を遂げている。いわゆる便利さや有効性などについて疑義を持つ人は皆無といえよう。「安くて、早くて、便利」の三拍子そろったITの普及は、何でもできると錯覚させるに十分な状況だ。

さて前回も話したが、企業へのITの普及状況はほぼ行き渡った感がある。しかし、果たして企業活動にとって十分な生産性や売上などの「効果が目に見える形で表れている」かどうかといえば、若干疑わしい。断定的に言えば、便利になったが、実際の活用方法の本質は大きな進展がないというのが今回のポイントだ。

そんな馬鹿な、と思う方もいらっしゃるはずだが、実際にITによって企業活動がどの程度「目に見える効果を生んでいるか?本当に活用しているか?」を検証してみれば、そのことにすぐに気が付くはずだ。便利さと活用目的を混同しているだけに過ぎないのではないか。

情報を処理するためのIT、例えば日常的に業務で生ずる販売、注文、請求などの伝票類における経理、財務処理用の業務システム、メールやホームページなどのコミュニケーション処理をするためのネットワークシステム、いわゆる企業の生産活動を補完するための利用方法としてのITは、十分に活用の範囲を広げていることが分かる。その部分でのITの役立ち加減は身近で理解できる。

一方で、いわゆる企業にとっての本業(コア事業)ともいえる「生産する、販売する」に直結するITとしての普及は進んでいるかどうか疑わしい。つまり企業にとって役立つITの活用方法が限定的でしかないということが見えてくる。昔風に言えば、業務系、情報系、そしてフロント系のIT活用でのカテゴリーでの、フロント系活用が極めて旧態依然としていることに気が付く。

次に求められている「攻めのIT」

では、良く聞かれる戦略的なIT活用とこれに対応するITの道具立ては何かというと、BI(ビジネスインテリジェンス)が筆頭だろう。社内に蓄積された顧客、営業、売上など既存の情報を有効活用して本業の売上拡大に結び付けるシステムである。

それは、人間のスキルや勘からITに置き換えて企業のコア事業に役立たせるという狙いだ。これから導入が期待されているITの代表がこのBIだ。加えて今はビッグデータと呼ばれる壮大なバズワードまで作り出されている。マイルス・デイビスではないが「So What?」な代表的なバズワードとしてのITが、企業にどう役立つのかが問われている時代だ。

具体的な調査結果(前回と同じく「中小企業等IT活用に関する実態調査(IPA、従業員数20人~300人の企業1887社対象)」)でみれば「売上を伸ばしたい」92.6%、「収益・財務体質を改善したい」89.3%とこの二つが中小企業にとって最優先課題であることが分かる。

一方、ITがこの課題に対してどの程度対応しているか(IT化率)では「売上を伸ばしたい」で62.5%、「収益・財務体質を改善したい」が62.6%であり、経営上の課題に対してのIT化率は30ポイントもの大きなギャップを生んでいることが分かる。

ただし、別のIT導入意向の調査結果をみると、中小企業において、コア事業に貢献するいわゆる「攻めのIT」へ投資意欲は、常に高いレベルで指向していることが読み取れる。ここ数年来のソリューション導入意向やクラウドの導入意向の経年変化をみてもこの傾向に変化はみられない。

つまり「攻めのIT」の導入意向は常に高いが、様々な理由から導入に至っていないのが現実であり、本質的な課題を抱えている。

更に次回は、経営課題の解決とIT導入目的になぜギャップが生じているか?について掘り下げてみたい。

Image (c) kazoka303030 - Fotolia.com

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。