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モノと道具を再構築する

2014.04.15

ITの使われ方は10年以上前から変わっていない

伊嶋 謙二

ITは企業の役に立っているか

IT 競争 意識改革 差別化 技術革新 生産性 効率 成長戦略

今さら企業にIT導入って、それ必要ですか?企業として活動するに際して、いわゆる会社石器時代の遺物としての電卓、電話、FAXだけで済ませる企業は無い。どこの企業でもパソコンなどのコンピューターを導入して企業活動を行っている。導入状況としてはむしろ十分すぎるIT装置を導入しているのが実態だ。

何がITとして企業にとって重要かはともかくとして、複写機などの事務機器はもちろん、パソコンや高速の通信回線、そしてインターネット回線など外部とのビジネス上のやり取りにITを活用するのが前提となっていることは明らかだ。

そこで今回から数回、中小企業のITの導入実態と経営課題に着目した調査結果を元に「企業にとってのITの役立ち具合」を解説したい。1回目の今回は、すでにどんな企業でも十分備わっている道具としての「IT」の装備具合を見てみるとしよう。

すでにほとんどの企業がITを導入しているという結果を見るにつけ、企業の経営や組織などでITがうまく活用されていることと同義かといえば、実は少し違う。便利で安くなったITを導入しているが、本当に経営に役立つような活用をしているかどうか、ここが最も重要な点だ。

このコラムの根底にあるのが、「本当にITを経営に役立つ使い方をしているのか?」を解き明かすことにあるからだ。実際にITを導入している中小企業を調査した結果を紹介しよう。細かくいえばきりがないので、かいつまんで要点だけを述べる。

今回紹介するのは、2012年9月に実施した「中小企業等IT活用に関する実態調査(IPA、従業員数20人~300人の企業1887社対象)」だ。これによると、中小企業はITの導入が進んでいる状況は、調査結果での導入率が示すように極めて高い水準にあることが分かる。

この調査は、全国の商工会議所の職員が、中小企業に対して訪問で調査を行った結果だ。この調査設計にはノークリサーチも絡んでいるので、結果についての納得感が極めて強い。2007年にも同様の調査を行っており、前回調査との対比でも傾向は全く変わることがなかった。

この調査結果で変わらなかったこととは何か?中小企業のIT導入率から言えることは、ITの導入は進んでいるものの、その使い方は十数年前とほとんど変わっていない点にある。いわゆるOA化=コスト削減、業務効率化などの前近代的な目的におけるIT投資にいまだに軸足があり、経営や現場の仕事に直結するIT投資についてはいまだに導入率が低いままということだった。

「パソコン」99.6%「PCサーバー」80.2%「社内LAN」86.6%「インターネット」98.6%、いわゆる自社内ITインフラは中小企業でもほぼ導入されている。また「財務会計システム」は87.9%が導入されている。つまり、いわゆるITの基盤をなすハードやネットワークインフラは、規模の大小を問わずほぼ完備されているといえる状況だ。

逆に「取引先や仕入先に対する発注や仕入れを目的としたEDI連携のためのITシステム」はいまだに3割程度の導入率にとどまっている。「社内の本支店間のITシステム連携」でも、5割に満たないIT化率となっている。遠隔地や取引先との業務処理のネットワーク間でのやり取りにおいて、いまだにIT化が十分ではないことが分かる。

結論からいえば、企業にとっては便利さがありがたいITシステムの導入は十分に進んでいることは分かった。しかし一方で、経営者や企業全体にとって「本業に役立つIT」はまだまだ目の前に現れていないようだ。

そもそも論として「経営に役立つIT」がなぜいまだに実現できないのか?そして経営とIT活用という観点で「なぜITは企業の本業に響かないのか?」という視点に立って、次回からは企業がITをうまく経営に活かすためにどうするかをじわじわと述べることにする。

Image (c) oki - Fotolia.com

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。