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人を組み替える

2014.03.26

息子の会社が危ない!自分の会社で支援したいが…

石原 豊昭

経営者家族の法律問題

役員 コンプライアンス オーナー 信用 資金調達 粉飾決算 家族経営 危機管理

会社は社長さんの私物ではない

取締役は、その事業活動においてコンプライアンスに反することなく、また会社のため忠実にその職務を行わなければなりません(会社法355条)。しかし、中にはコンプライアンスを軽視し、粉飾決算などの不当な行為で会社や株主、取引先に損害を与える社長さんや役員もいます。これは、中小企業に限ったことではありません。

この3月10日、東京証券取引所は上場1部のリソー教育に粉飾決算があったとして、同社株を「特設注意市場銘柄」に指定しました※。

同社は、代表取締役ら経営陣の指示または黙認の上で、未実施の授業を実施したように装うなど総額83億円売上げを水増し、当期純利益も総額58億円過大に計上したそうです。同社が訂正した有価証券報告書によると、各期の利益は大幅に低下、債務超過もあったことが判明し、東証は投資家の信頼を損ねたとして、今回の処分に至ったと発表しました。なお、新聞報道では、同社株主には約45億円が違法配当されたとも報じられています。

 粉飾決算や違法配当は、株式を上場していない非公開会社でも起こります。社長さんがその事実に気づかなかったとしても、他の取締役とともに違法配当を全額、会社に返済しなければなりません(462条)。また、自ら指示したとすれば、罪に問われます。

時には息子でも切り捨てる冷徹さも必要

家族経営や同族経営の会社では、「会社は自分のもの」と考える社長さんも多いようです。そのため違法配当以外にも、必要な法手続きを経ずに会社から金を引き出すケースが多々見られます。例えば、業績が悪化した自分や家族、親族の経営する別会社を救うため、会社の金を独断で別会社に注ぎ込むのが典型的な例です。

放漫経営やコンプライアンスに反する行為がなくても、事業は生き物です。今まで好調だった会社の業績が突然悪化し、最悪経営破たんということがないとは言えません。その会社が、例えば息子さんの会社(別会社)で、息子さんに泣きつかれたとしたら、親御さんとしては何とか救ってやりたいと思うのが人情でしょう。もちろん、社長さんが個人的に別会社の債務を肩代わりしたり、資金援助するのは起業の場合と同様自由です。借金の連帯保証人になったり、個人名義の不動産を別会社の担保に入れてもかまいません。

しかし、自分が経営する会社の金を、取締役会や株主総会にはからず独断で新会社に注ぎ込んだとしたら、法律上問題です。支援は息子さんの会社を救うためですから、これは取締役と会社間の取引で、明らかに利益相反取引です。取締役会や株主総会の承認なしに支援することはできません(会社法356条)。この承認を得ずに会社の金を別会社に注ぎ込んで会社に損害が生じれば、社長さんはその損害を賠償しなければなりません(会社法423条2項)。場合によっては、特別背任罪に問われる可能性もあります。

もっとも、家族経営や同族経営の会社では、社長さん以外の取締役は大半が家族や親族でしょうし、会社の株式もほとんど一族で所有している場合が多いでしょう。取締役会や株主総会にはかれば、おそらく承認されるはずです。独断で会社の金を注ぎ込むことはせず、必ず会社法などの定める手続きを踏むようにしてください。

ただし、別会社を支援するかどうかは情実で決めず、1人の経営者としてキチンと判断するようにしましょう。息子さんからは必ず再建計画書を提出させ、その内容を社内だけでなく信頼のおける税理士などの専門家にも細かくチェックしてもらい、その上で、支援の是非を決めることです。その基準は、起業の場合より厳しくする必要があります(起業は甘くていいということではありませんが)。例えば、このまま事業を継続しても業績が改善する見込みがない会社、放漫経営で破たんしたり、違法配当などコンプライアンスに反する経営をしてきた会社まで助ける必要はありません。

また、別会社は救っても、息子さんには役員退任など業績悪化の責任を取らせることも必要でしょう。

いずれにしろ、何が何でも支援するのではなく、経営者として、時には息子さんやその会社を切り捨てるという厳しい決断もすべきでしょう。息子さんの会社を支援した結果、社長さんの会社まで傾いてしまってはシャレになりません。

Image (c) paylessimages - Fotolia.com

プロフィール

石原 豊昭 (いしはら とよあき)

弁護士。東京弁護士会所属。1928年山口県生まれ。中央大学卒。三井三池労働争議事件はじめ、暴力金融・株券金融犯罪グループ事件の被害者救済など、多くの事件を手がけてきたベテラン。著書に『債権なにがなんでも回収法』『遺言の書き方と活用法』『訴訟は本人で出来る(共著)』など多数。