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人を組み替える

2014.03.13

20人未満の零細中小企業はITの必要性を感じていない?

伊嶋 謙二

ホンネのITマネジメント

IT 成長戦略 信用 寄り添うビジネス 技術 中小企業市場 意識改革

こんな仕事をしているのに妙な話なのですが、「中小企業は本当にITを必要としているか?」と思うんですよ。ここでいう中小企業というのは、従業員数20人未満の会社です。B2Bビジネスのプレイヤーは相手にしない層ですが、日本の企業の9割以上がこのクラスターに所属しています。

彼らを対象にした調査をしながら、どんなサービスを欲しがっているのか、クラウドビジネスをどう利用すればいいのかといったことを聞き出して、それをベンダーに提供するのがうちのビジネスです。

経済産業省からの受託調査で、従業員300人未満の企業を対象にした調査を行ったことがあります。もちろん従業員規模20人未満の企業も含まれています。その結果によると、パソコンも高速インターネットも、企業規模によらず実は既に完備されている。今の日本では、会社であればその程度のIT環境は既に100%導入されているといってもいい。

そのうちでも、例えば従業員が100人いる会社なら、社内に一人ぐらいは情報システム担当者がいて、現場と経営者の板挟みになりながらITのことを考えています。でも20人未満の会社では、ITのことなんて考えていない会社がほとんどなんです。だから、「ITの課題」と言われても思いつかないのですね。「パソコン導入して速くなった、便利になった」が全てで、そんなものだと思って満足していますから。

コンピューターについて特に不満に思っていないことが特徴で 、商売の相手としては非常にやりにくいと思いますよ。不満を感じさせるための情報量が足りていないということだと思います。唯一、彼らに響くのは「このまま放置すると取引先に迷惑をかけますよ」という言葉ですね。そう言われたら仕方がないので、あわてて対策する。

セキュリティに関しても、実質的にはほぼノーガードとなっている会社が多い。例えば素性がわからないUSBメモリーは危険です、と言われても、せいぜい口頭で注意をするぐらいで、強制的にPCに差し込めないようにするような処置は、とらないし、できない。「BYODが危ない」という以前の問題です。何か本当に困った事態が発生しない限り、何もしません。

パソコンを買って仕事が早くなった、光ファイバーでインターネットを引いて安くなった、便利になった。彼らはそれで満足しているので、新しいものが出たからといって、今あるものが使えるのだから変える必要はないと思っています。Windows XPのリプレイスがなかなか進まないという話がありますが、彼らにしてみれば「今使えているパソコンを変える必要はないでしょう」ということになります。

IT投資で売り上げが上がるかどうかなんて誰にも分からない。大企業であれば何億円IT投資することで競争力がこれだけ上がって、効果がこれだけ、と〈見える化〉できるけれども、中小企業には難しい。Facebookを活用して顧客獲得といったチャレンジも、たまたま2代目がそういうことに明るい人なら黙ってやってしまうかもしれないけれども、大多数はそうではないですね。

中小企業にとって、ITは投資ではなく経費ですから、できるだけ社長はお金を出したくないのです。「新しいサービスを導入すると、実は今の半分の費用でもできるんですよ」という、コストを劇的に下げる話であれば、聞いてくれるかもしれません。

こういう中小企業を相手に、大手の通信企業が、今、ビジネスをしようとしています。彼らは「これからは通信回線だけを売っても商売にならない」と思っていて、ITに関わるさまざまな商材を一緒に売りたいと思っている。このビジネスを成功させようと思ったら、「安さ」は最初のキャッチにはなるかもしれないけれど、最終的には経営に助言するという発想でなくてはうまくいかないと思います。中小企業市場でうまくいくのは、人と人の関係で成り立つビジネスですから。「寄り添うビジネス」が中小企業にとって極めて重要な要素です。

Image (c) Rawpixel - Fotolia.com

プロフィール

伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

1956年秋田生まれ。矢野経済研究所でのIT産業の調査・研究業務に従事した後、1998年にIT調査会社ノークリサーチを設立し、代表取締役社長に就任。現在に至る。中堅・中小企業(SMB)市場のIT調査を得意とし、SMBのIT利用実態に詳しい。様々な関連業界誌で積極的な執筆も展開中。