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働く女性のうつ病を防ぐ鍵は、「できない」という力(負荷軽減と現実検討能力)

2014.10.07   あいクリニック神田理事長・立正大学大学院教授 西松能子 氏

西松能子 氏
あいクリニック神田理事長
・立正大学大学院教授
西松能子 氏
[略歴]
1979年(昭和54年)大阪医科大学医学部卒業
1994年(平成6年)日本医科大学附属千葉北総病院神経科部長
1996年(平成7年)コーネル大学医学部ウェストチェスター部門客員教授
2003年(平成15年)あいクリニック神田開設 院長
2004年(平成16年)医療法人久響会設立 理事長、現在に至る
2006年(平成18年)立正大学心理学部教授、現在に至る
[公職]
1999年(平成11年)~現在 日本サイコセラピー学会理事
2010年(平成22年)~現在 日本カウンセリング学会理事

男性に比べ、女性は、うつ病になりやすいと言われている。近年、女性の社会進出が進み、家庭と仕事の両立のストレスから、うつ病を発症する人も少なくない。働く女性の置かれた環境とうつ病について、あいクリニック神田理事長・立正大学心理学部教授の西松能子氏にお話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

仕事、結婚、女性らしさ
全てを求める女性たち

安倍政権が成長戦略の1つに女性の登用を掲げるなど、女性の社会進出を促す動きが強まっています。女性を取り巻く環境は、以前とどのように変わってきたのでしょうか。

西松 この半世紀で女性に対する意識は、社会全体だけでなく、女性自身も大きく変わってきたと思います。私の若い頃は、高学歴でキャリアを築こうとする女性は、結婚相手としてみなされない風潮がありました。私の兄も、友達から「お前の妹、何してる」と聞かれ、「医学部に行っている」と答えると、「あー、だめだ」という反応が返ってきたそうです。当時、高学歴の女性は、はなから女性としての魅力はなく、結婚にも向かないと思われていたのです。

1970年代に作家の桐島洋子さんが、『聡明な女は料理がうまい』という本を出した時、世の中は驚きました。それまで、“聡明な女は料理が下手”が当たり前だったのですから。作家としてエネルギッシュに仕事をしながら、シングルマザーとして3人の子どもを育て、料理もうまいという彼女は、当時はまだ例外的な存在でした。

こうした状況が劇的に変わったのが、1999年の男女雇用機会均等法の改正以降で、その象徴となったのが、2003年にエッセイストの酒井順子さんが出された『負け犬の遠吠え』という本です。これは、「仕事をして自立している女性でも、結婚して子どもがいなければ、人生の“負け犬”である」ということを自嘲気味に書いたエッセイで、女性の心をつかんでベストセラーとなり、「負け犬の遠吠え」という言葉は、翌年の流行語のベスト10にも入りました。

この本が大ヒットとなった背景には、仕事だけできても幸せな女性とは言えない、女性としての魅力も家庭も手に入れることが望ましい女性のあり方といった考え方が、世の中に広く受け入れられてきたためでしょう。

こうした社会を反映するかのように、東大出の女優や医師で女優といった頭脳明晰な美人がメディアにも多数登場するようになり、女性たちは公然と、学歴も結婚も美しさもと、あらゆるものを求めるようになりました。

さらに、最近はこうした女性たちの望みを国が後押ししています。女性誌に掲載された“働くなでしこ大作戦”という総務省の広告には、「結婚もする。子育てもする。自分らしく仕事もする」というキャッチコピーがありますが、まさに、全てを手に入れようとする女性たちを象徴的に描き、これを働く女性の理想像として国も奨励しているのです。