トップページインタビュー世界に先駆け、精神疾患のメカニズム解明に取り組む日本 霊長類を用いた研究でブレークスルーに期待 第2回(連載2回)
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世界に先駆け、精神疾患のメカニズム解明に取り組む日本 霊長類を用いた研究でブレークスルーに期待 第2回(連載2回)

2014.09.02   国立精神・神経医療研究センター理事長・総長 樋口輝彦 氏

樋口輝彦 氏
国立精神・神経医療研究センター理事長・総長
樋口輝彦 氏

1972年 東京大学医学部卒業。
1976年 埼玉医科大学精神医学講座助手。
1981年 マニトバ州立大学医学部生理学教室神経内分泌研究室留学(カナダ)。
1983年 埼玉医科大学精神医学講座講師。
1989年 群馬大学医学部精神神経学講座助教授。
1994年 昭和大学藤が丘病院精神神経科教授。
2000年 国立精神・神経センター国府台病院院長。
2004年 国立精神・神経センター武蔵病院院長。2
007年 国立精神・神経センター総長。
2010年 現職
[公 職]日本学術会議会員

「うつ病リワーク推進協議会」では、2010年から東京、大阪、名古屋において、計6回にわたるメンタルヘルス・シンポジウムを開催してきた。うつ病の治療、リワークのあり方、そしてうつ病が増加しているとされる社会背景にまで踏み込み、精神科医をはじめ、産業医、医療従事者、患者など、それぞれの立場で考えてきた。

連載2回の第2回目は、「うつ病リワーク推進協議会」の特別顧問を務める国立精神・神経医療研究センター理事長・総長の樋口輝彦氏に高齢者のうつ病の現状と課題、同センターで取り組んでいる研究などについて、お話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 但本結子 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

身体合併症を伴う高齢者のうつ病
専門的なトータルケアが不可欠

超高齢社会へと移行する中で、高齢者のうつ病が問題となっていますが、これについて、どのようにお考えでしょうか。

樋口 高齢者のうつ病における問題の1つは、超高齢社会に向かっている中で、一定の比率でうつ病が生まれるとすれば、高齢者のうつ病も確実に増えていくことです。高齢者のうつ病になるきっかけは、親しい人を亡くすといった喪失体験です。最も深刻なのは、高齢になればさまざまな病気を抱えるため、その中でうつ病を併発し、さらに病気の進行が早まっていくことです。中でも、私たちがこれから考えていかなければならないのは、家族構造の変化に伴って増えている独居老人このことです。

つながりの薄い都市部では、特に深刻な問題になっています。

樋口 都市と地方の格差はさらに広がっていくでしょう。地方ではまだ周りに家族や地域があって面倒をみてくれる体制がありますが、問題は都市部です。地域とのつながりがなく、コミュニティーも持たない孤独な高齢者は、うつ病から回復する手立てがない。その対応や対策を早急に考えなければならないと思います。

もう1つのファクターは、先ほども少し触れましたが、高齢になれば極端に体が虚弱になっていくことです。日本は世界一の長寿を実現しましたが、一方で長生きになればなるほど、抱える病気も増えます。そうなると、高齢者が抱える病気に注意しながらの治療が必要ですが、これは極めて難しいことです。向精神薬に対する反応性も加齢と共に変化するので、きめ細やかな処方が必要になります。したがって、身体合併症を持った高齢者のうつ病ケアについては、専門的に取り組むことが不可欠です。

高齢者のうつ病に関して、治療法は確立されているのでしょうか。

樋口 現状では、若い人たちのうつ病に準じて、薬の量を少し下げるといった対応です。それから、高齢者の4~5人に1人は睡眠薬を飲んでいますが、これも相互作用も含めて、大きな問題です。今後は、高齢者におけるうつ病と身体合併症のトータルケアにきちんと取り組んでいくことが求められます。