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第2回(連載2回)
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社会問題化するうつ病対策には 職場復帰を支援する リワーク・プログラムの整備が急務
第2回(連載2回)

2014.06.24   構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子
文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

樋口輝彦 氏
国立精神・神経医療研究センター理事長・総長
樋口輝彦 氏
1972年 東京大学医学部卒業。
1976年 埼玉医科大学精神医学講座助手。
1981年 マニトバ州立大学医学部生理学教室神経内分泌研究室留学(カナダ)。
1983年 埼玉医科大学精神医学講座講師。
1989年 群馬大学医学部精神神経学講座助教授。
1994年 昭和大学藤が丘病院精神神経科教授。
2000年 国立精神・神経センター国府台病院院長。
2004年 国立精神・神経センター武蔵病院院長。2
007年 国立精神・神経センター総長。
2010年 現職
[公 職]日本学術会議会員

厚生労働省の「平成24年度労働者健康状況調査」によれば、メンタルヘルス上の理由で連続1カ月以上休業、または退職した労働者がいる事業場は8.1%。今や企業にとってメンタルヘルスは、避けて通れない課題である。

うつ病患者の職場復帰になぜリワーク・プログラムが必要なのか、国立精神・神経医療研究センター理事長・総長である樋口輝彦氏にお話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

本人が心から復帰を望むかどうか。
リワーク時期やタイミングを判断する客観的指標の研究も進む

このような状況から、うつ病のリワークに対する取り組みが進んだのでしょうか。

樋口 うつ病にもリハビリが重要であるという認識が広まったのは、ここ20年ぐらいのことです。現在も、リワークそのものに対する取り組みを行っている機関は非常に限られています。そして少ないとはいえ、うつ病患者が職場に復帰する前段階として、復帰を支援するプログラムがあります。それはあってしかるべきで、なければないことによって起こるドロップアウトが当然あるでしょう。

また、一口にうつ病患者がリワークを目指すといっても、その患者像は一定ではありません。「現代型うつ病」と呼ばれる新しいタイプのうつ病や、非定型うつ病など、リワークには困難な条件を複合的に持った人が、相当数混じっていると考えられます。今後は、そのような患者を対象とした研究も必要になってきます。

ここで重要なのは、患者本人が、心から職場復帰を望んでいるかどうかです。実は、それがリワークを成功させる一番のポイントです。 何がなんでも復帰したいという強いモチベーションを持ってリワーク・プログラムに取り組んでいる人は、簡単ではないが、必ず前に進みます。

一方で、受け入れ側の職場が困っているのは、リワークを目指す人が、どのような状況になれば、職場に戻ってうまくやっていけるのかという見極めで、それを判断する物差しが欲しいわけです。

そこで、いま期待されているのが、客観的な指標の研究です。すでにいくつか研究が始まっており、光トポグラフィを用いた職場復帰の時期を予測する研究などもその1つといえます。これらが実用化されれば、産業医や企業の人事部に説得力を持って、リワークする時期やタイミングを選択し、推薦することが可能になると思います。

職場復帰を成功させるには、
リワーク・プログラムと 復帰支援体制が欠かせない

休職から職場復帰を成功させ、そして、また再発や休職をさせないためには、それを支援する体制の整備が必要ですね。

樋口 寛解後のフォローアップがしっかり行われれば、うつ病に罹患した患者の大部分が職場に戻ることは可能です。リワークを目指す人たちにとっては、2カ月ないしは3カ月のリワーク・プログラムは必須であるといえます。復帰後、安定して仕事を継続していくことができるかどうかをみるには、少なくとも1年間は主治医を中心とした医療チームが患者を継続してケアしていくことが必要です。

前述したように、こうした体制はこれまで整備されてきませんでしたが、ここにきてリハビリテーションやソーシャル・サポートに対する認識が高まり、リワークのサポート体制を整備する動きも進展してきました。

厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き改訂版2009年」を出し、休業開始から職場復帰後のフォローまでを5つのステップに分けた支援策が示されるなど、その手順がまとまってきました。また、リワーク・プログラムも作成されつつあり、地域においてもリワークや社会復帰のプログラムが立ち上がり始めました。

長期休職者や離職者への対応策も、地域障害者職業センターの復職支援事業や総合病院での職場復帰支援プログラムなどが整備されつつあります。

労働力人口が減っていくことが予想されている中、うつ病の人を復職に導くことは、貴重な労働力の確保という観点からも重要です。そのためにも、リワーク・プログラムの整備は、重要かつ喫緊な課題であるといえます。

第2回終わり(2回連載)