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数少ない大学病院のリワーク・プログラム。医療機関同士の連携で地域に貢献 第2回(2回連載)

2014.04.15   構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子
文責:日経BP社21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

平安良雄 氏
横浜市立大学附属市民総合医療センター 病院長
平安良雄 氏
1961年、沖縄県生まれ。
岡山大学医学部卒業、同大医学部大学院修了。
琉球大学医学部精神神経科講師、ハーバード大学医学部精神科客員助教授、杏林大学医学部精神神経科助教授を経て、
2003年より横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門主任教授。
2010年より同大学附属市民総合医療センター病院長。
精神保健指定医。
専門領域は神経画像学、臨床精神神経薬理学。
医学博士

横浜市立大学では、金沢区の附属病院においてデイケア(復職支援ショートケア)を行っている。連載2回の1回は、これを指揮する横浜市立大学附属市民総合医療センター病院長の平安良雄氏に、デイケアの課題などについてお話を伺った。
(構成:21世紀医療フォーラム取材班 赤堀たか子 文責:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

デイケア以外をどう過ごすか。
大切なのは、自分で計画を立てられること

 

プログラムの終了後、職場に復帰すれば、一般的には週5日、毎日8時間の勤務が始まる。その観点からすれば、週3回、しかも午前中だけというプログラムは短いように感じるが、平安氏は「時間が長ければいいというわけではない」と指摘する。

なぜならデイケア以外の時間をどう過ごすか、自分で決めてやっていけるようになることが重要だからだ。また週3日というのは、自分である程度計画的に行動できるようになるための訓練でもある。たとえ週3回でも、朝起きて会社の始業時刻と同じ時刻に間に合うように通ってくることが大切で、これができなければ出勤も難しくなる。家ではなんとか毎朝きちんと起きられるのに、デイケアの開始時刻に間に合うように起きるという条件がつくと、途端に起きられなくなる人も出てくるという。

プログラムを休む理由を自ら説明できることが復職の要件になる

リワーク・プログラムは12名までの枠のグループでスタートするが、中には欠席しがちな人や途中から来なくなる人もある。こうした人たちはプログラム終了後も復職させず、もうしばらく休職させる。その理由を平安氏は次のように述べる。

3カ月きちんと皆勤した人は、復職準備がある程度できているとみなすことができますし、会社に戻ってもなんとか続けていっています。また欠勤する場合も、一概にダメと決めつけることはせず、欠勤理由を確認しています。風邪などで本当に体調が悪い時は、自分で連絡ができればいい。休むと電話をすることで、自分がまた悪くなったと思われるのではないか、そうしたマイナス思考が働くようでは、やはりまだ難しい状況であると考えられます」。

単に人と話をするということだけではなく、自分の都合をきちんと伝えられる、あるいは相手の都合を聞きわけて整理ができることも復職のためには欠かせない要素だ。

リワーク・プログラム終了後のフォローアップでは、一緒に活動した仲間と励まし合うことがいい結果を導く。これには、職場復帰の擬似体験という意味もあり、「家族だけではない、主治医でもない、知らない人がたくさんいる状況に身を置くことで、社会復帰の擬似体験になる」と平安院長は説明する。

トレーニングの結果が100点ではなくてもやらないよりはずっといい

うつ病は、脳に負荷がかかって過労に陥った機能不全状態なので、まず脳を休ませ次に脳の伝達物質を補強するために服薬治療をすることで、ある程度神経活動が回復してくる。その間にいろいろな社会的調整をする。家族や仕事など、病気の原因となったストレスから少し離れさせることで、場合によってはこれで解決できることもあるという。

そして認知療法などの精神療法を用い、本人の陥りやすい性格特性、うつ病のために起きているコミュニケーションの低下といった問題をリハビリで解決していく。その中で自分のコミュニケーションや考え方のパターンを理解し、解釈して、復職時に役立てる。

元の職場に戻り同じ場面に遭遇したとき「こういう練習したな」「こういうときは、こう答えてみよう」と学んだことを応用できる人は職場に戻っていきやすい。

しかし同じトレーニングをしても、全ての人がうまく対応できるわけではなく、60点、70点 の人もいる。

「それでも、全然やらないよりは復職率はいい」と、平安氏はリハビリの必要性を強調する。

復職できない人への対応とプログラムの効果の実証がこれからの課題

今後の課題はリワーク・プログラムで復職できなかった人たちへの対応だ。基本的にリワーク・プログラムは、回復期の患者像を基本に作っているため、それで復職できなかった人には次の手立てが必要になる。今後はそうしたプログラムの開発も求められる。

もう1つ、リワーク・プログラムの効果を実証することも重要なテーマである。プログラムを受けた人の約半数は完全に復職できるようになっているので、リワーク・プログラムは何らかの効果はあることはわかる。

また、今まで何度も復職に失敗した人が、リワーク・プログラムを受けたおかげで成功した例も出てきている。

しかし、リワーク・プログラムの効果があることを科学的・統計学的に証明するとなると、さらに多くの事例や時間が必要となる。容易なことではないが、これを証明することができれば、うつ病患者のリハビリに対する社会や職場の理解や協力も得やすくなる。

「野球選手が肩を壊した場合、肩が治ったからといって、すぐ1軍に上げて投げさせることはしません。ケガから復帰したとき、真っ先に行うのはリハビリです。うつ病患者が復職するときは、故障した選手よりもっと複雑なプロセスが必要になるので、本人も周囲もこのくらい長くかかるという理解が必要です。そしてそれができれば、かなりの人が、思ったよりも早く復職できるものです」と平安氏は結んだ。

第2回終わり(第2回連載)